INTERVIEW(3)――ワンストロークに込められた切なさ
ワンストロークに込められた切なさ
――そこがこの3人で、SISTER JETとして音を鳴らす意味でもありますよね。ではここから楽曲面の話に移りますが、この1年はよりシンプルに、わかりやすく、ポップに、ともかく歌を中心に、という方向へ振り切ってきたんじゃないかと思うんですけども。
ワタルS「うん。そうね」
――シンプルに良いメロディーをどう引き立てるか。ただ一方で、このバンドのリズム隊はすごく個性的で、特に初期の音源はいい意味でそれが制御されず出ていたと思うんですね。この1年で、お2人は自分のプレイに対して何か意識したことはありますか?
サカベ「詞も変わってきてるし、バンドも変わってきてるから、それに合わせて自分のプレイ・スタイルも変えてきてますね。最近特に思うのは、昔はバラバラの方向向いてたっていうか、各自がそれぞれ、自分の思うカッコいいことを自己責任でやってて、そのまとまってない感じが俺はいいなって思ってたんですけど、でも最近はそうじゃないなと思って。うちのバンドは歌を中心として、それぞれが音の差し引きをして三本の線がひとつの太い線にならないと、人の心には突き刺せないな、と。それを意識して演奏するようにはなりました」
――アオキさんは?
アオキ「いい意味で、何も考えないようにはしてますよ。ドラマーとして」
――それは例えば、おかずでも以前は目一杯に盛り込もうと思ってたところが、いまはまず歌ありきで、一歩引いたということ?
アオキ「そうです、そうです」
ワタルS「いや、違うな。確かにね、単体で見たら昔はすごいカッコよかったな、って思う。ライヴでもレコーディングでもなんも考えずに叩いてるのを見ると、やっぱりセンスがいいなと。でもよくよく考えると、ライヴとかでたまにそういうおかずを入れようとすると、凡ミスになる(笑)」
アオキ「いやいや、そこがですね、今回の作品はちゃんと叩くとこを決めたんですよ」
ワタルS「いままではスタジオに来て、レコーディングするときにゴネて、毎回テイクが違うのを叩いて凡ミスしてたからさ」
アオキ「そういうふうに瞬間で向き合うのが、ロックのすべてだと思ってたから。でも今回ちゃんと決めて叩いた作品を聴いて、ドラムに関して思うのは〈やっぱり俺、センスいいな〉って(一同爆笑)。入ってるおかずとかもちゃんと曲を理解してる。“キャラメルフレーバー”の歌が始まる前のフィルとか、超普通のフィルだけど〈俺、めちゃくちゃカッコイイな〉って自分で思ったり(笑)」
サカベ「すごいドラマーだな(笑)」
ワタルS「あとね、俺、最近すごく思うんだけど、スポーツ的にライヴをやってるバンドがけっこう多いなって。で、俺たちはそうじゃないし、この2人がスポーツ的になったらおしまいだなと思ってて。ケン坊はこういうふうに葛藤してるからこそいいと思うし」
サカベ「わかるわかる。さっきも言ってたストロークスの〈ジャカジャーン!〉っていう一発のカッコ良さよりも、〈ドンツク・ドンツク・ドンツク〉ってやったほうが瞬間的に盛り上がるんだけど、でもボロい音で〈ジャカジャーン!〉ってやったときの切なさというか、その裏側にある精神。そういうものを大事にしていきたいなって思ってて」
ワタルS「お客さんが〈ウワーッ〉と一瞬で上がって、笑顔で〈超楽しかったね〉って帰る。それはそれでいいと思うんだけど、そういうライヴはスポーツで。だけど俺たちはそうじゃなくて、お客さんが帰るときに〈楽しかったね〉で終わらない何かを残したい。笑ってんだけど涙が出てるっていうのがいちばんいいなと思ってるんだけど、いかにそういう演奏ができるかとか、そういう見せ方ができるかとか、自分たちの精神、気持ちとか……」
――そういう雰囲気も、今回の作品には反映されてると思いますね。ワンストローク、ひとつのフィルに込められた切なさが伝わってくる。あとさっきも言ったんですけど、今作は楽曲のテイストの幅が本当に振れていて。とは言え、最近出来た曲は特に、ですけど、“キャラメルフレーバー”に引き続いて90年代以降の感覚があるなあと。
ワタルS「ああ、“SAY YES”に関してはすごくあるかも。シューゲイズみたいなのをやりたいって言ってて」
サカベ「仮タイトルから〈90年代感がある〉だったもんね(笑)」
ワタルS「あとは最近、10代の頃に聴いてたストロークスとか、素直に聴けるようになったな。去年とかまでは絶対聴かないとか思ってたんだけど、もう1回聴き直して、あの頃の自分はどこでハートを動かされたんだっけ?って」
――そういうところも最近出来た曲には反映されている?
ワタルS「そうかもね。結局自分がいちばん衝撃受けたことは、いまでも通じるんじゃないかな、って。1曲目、爆音でドカーンときたら、それだけで昔の俺はアガってたなっていう……ホントにそれだけの理由で、シューゲイズっぽい曲にしたいなって思ったもん」
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