INTERVIEW(3)――ラウド・クワイエット・ラウド
ラウド・クワイエット・ラウド
——同じバンドっぽい曲でも“typical”はディストーション・ギターがちょっとグランジっぽい感じですね。
直人「それこそ、前回のツアーがあったからこそ生まれた曲です。Rie fuがアコースティック・ギターを持って、その両サイドにエレキ・ギターがいて、っていう絵が、すごいカッコいいな、と思って。オーケストレーション的にも、アコギがいて、高いギターがいて、低いギターがいて、ちょっとテレヴィジョンみたいな感じ。ラウド・クワイエット・ラウド的というか、いきなり〈ボコーン!〉といって、突然静かになって、また〈バコン!〉といって(笑)」
Rie fu「前回のライヴでは、アコギとキーボード、ローズとかを弾かせてもらったんです」
——アコースティック・ギターはアルバムの隠し味になってますね。例えば“mistress”とか、ほかの曲が霧がかっているのに比べて、この曲は日だまりっぽいというか。Rie fuさんの歌声も他の歌より優し気で。
直人「この曲を作っているとき、昼間にビールを飲んでたっていうのがあるかもしれないですね。普段は夜目に焼酎を飲みながら作るんですけど、なんかこの曲は作ってる段階で〈これはビールだ!〉と思ってビールを買いに行った記憶があります」
Rie fu「昼から飲んでる、っていうのが爽やかさに繋がったのかも(笑)」
Rie fuの持つ毒
——Rie fuさんはシンガーとして、ソロの時とdelofamiliaでは表現の仕方も違ってきます?
Rie fu「前作のアルバムもヴォーカルで参加させていただいたんですけど、そのときはただ声を楽器として使ってもらうという感じで。今回はもうちょっと参加の仕方が濃くなって、より自分の感情的な部分とか人間らしさを出すようになりましたね」
直人「前作のときは〈そのへんを走ってきたつもりで歌って〉とか〈ちょっと疲れた感じで〉とか言ってたんですけど、今回は〈自分がいい感じで歌えるように歌ってください〉って任せたんです。表情を付けて歌ってもいいですし、無機質で歌ってもいいですし、自分が表現したいようにしてくださいって。たぶん、彼女に任せて彼女が気に入った歌い方のほうが良いテイクが録れると思ったし、実際録れたと思ってます」
——自由に歌ってみていかがでした?
Rie fu「ソロでは出してない、ちょっと辛辣な、毒々しさみたいなものが、わりと前面に出るようになった気がします。歌い方はそんなに毒々しい感じじゃないですけど、歌詞をよく見ていただくと、実はすごいことを歌っていたりして。良い感じに自分のなかの毒を吐き出せてすっきりです(笑)」
——それは、直人さんが作ってくるトラックがそういうところを刺激するんでしょうか?
Rie fu「そうかもしれないですね。コード進行とかもすごくベーシックなコードを使ってるけど、どこかで〈え?〉みたいな展開になったり。あとはギターの浮遊感とか、ちょっと曇りがちでダークなところもあるので、そういうのが自分のなかの毒々しさと繋がったのかもしれない」
——それはRie fuさん自身にとっても発見なんですか? こんなことを歌っちゃうんだ、みたいな。
Rie fu「普段からキツい性格ではあるんですけど(笑)、それを作品に出したっていうのは初めてですね。delofamiliaをやるようになってから、もっと自分の作品でもこういう部分を出したいな、って思うようになってきました」
——直人さんから見て、Rie fuさんの毒の部分ってどうですか?
直人「僕はすごい気に入ってますね。今回だと“typical”の歌詞とかヤバいですよ。僕が青春時代に聴いてた音楽に共通する毒だったりするので、〈この言葉、カッコ良いなあ〉って思ってます。僕は昔からRie fuのリスナーでもあったんですけど、そのときから、Rie fuのなんかちょっと刺のある部分に魅力を感じていたんです。だから、delofamiliaでも〈あ、出てきた、出てきた〉と(笑)」
——そういうところがRie fuさんにヴォーカルをお願いするポイントでもあった?
直人「そうですね。この人だったら、キャラクターも独特の雰囲気を持ってるし、ギターもピアノも弾ける。すごい戦力だなって。こんなにいろんなことができる人ってめったにいないし、それで毒の部分も持っているからdelofamiliaには合うんじゃないかと思って」