INTERVIEW(2)――変なビートとポエトリー・リーディング
変なビートとポエトリー・リーディング
——今回の収録曲のなかで、Rie fuさんが曲を聴いたときにメロディーや音色が新鮮だったものをひとつ挙げるとしたらどれでしょう。
Rie fu「“no name”っていう曲がすごく印象的で。拍も5拍子っていう独特のビートだったんです。あと〈パティ・スミス風なポエトリー・リーディングをやってほしい〉というリクエストがあったんですけど、ソロではやったことがなかったので新鮮でしたね」
——ポエトリー・リーディングというアイデアはどこから?
直人「〈フジロック〉でパティ・スミスのポエトリー・リーディングを観たんですよ。ラップでもないし、語りよりも微妙な起伏があって。そのときは演奏なしだったんですけど僕には音楽に聴こえて、〈これや!〉と思ったんです。自分でもやってみたいって」
Rie fu「私もロンドンでパティ・スミスのライヴを観たことがあるんですけど、いままで観たライヴのなかでもいちばん衝撃的で、すごく感銘を受けました」
——実際、ポエトリー・リーディングをやってみた感想は?
Rie fu「歌よりもフレキシブルになるというか。これまで自分の曲に語りを入れたことはあったんですけど、語りみたいに平坦じゃなくて、ちょっと語尾を上げたりとか、トーンを変えたりとか、背景の音にどういうふうに自然に絡むかとか、そういういろんなことを幅広く試せたので、すごく自由度が高いな、と思いました」
——トラック・メイキングはいかがでした?
直人「ヒップホップが好きなので〈ポエトリーリーディングはラップと近い〉と安易に考えて、だったらトラックもそういうふうなやつのほうが合うだろうと。でも、無意識のうちに変なビートになってたんですよね。作ってる段階ではまったく気付いてなくて、後から〈なんか変じゃない?〉って突っ込まれた(笑)」
楽器同士の空間を味わうような作品に
――今回のアルバムは、バンド・サウンドからポエトリー・リーディング、ダンス・ミュージックなどヴァラエティーに富んでいますが、サウンドの方向性についてレコーディング前に考えていたことはありますか?
直人「年々、人間っぽいものが好きになってきてるんですよ。バンドのテンポ感だったり、人のタイム感だったり、そこにだんだん魅力を感じてきて。派手に飾らなくても、ひとつひとつの楽器の空間を味わうような作品にしたいと思ってました」
——そういう〈人間っぽいもの〉が好きになるきっかけって何かあったんですか?
直人「前作のツアーがやっぱり大きかったですね。ドラム、ベース、ギター、ヴォーカル、キーボードでライヴをやったんですけど、それですごいテンションが上がったというか」
Rie fu「ORANGE RANGEってバンドっぽいイメージだったんですけど、実は直人さんが全部、音を作ってるんですよね」
直人「そうなんです。大体、僕が家で音を作って、そこで完結するというか」
Rie fu「私はソロの時は年上のミュージシャンにサポートしてもらうことが多いのですが、delofamiliaでは同世代のアーティストといっしょに作っていくのが新鮮ですね」
——今回の収録曲では“brightest star”とか、ソリッドなバンド・サウンドに仕上がってますね。
直人「アルバムのなかでは異質な曲だよね、これ」
Rie fu「ちょっとGLAYみたいだよね」
直人「みんなにそう言われているうちに、だんだんそんな気がしてきた(笑)。実は中学生のときにGLAYのコピー・バンドをやってたんですよね。友達のバンドだったんですけど、ギターが弾きたくて入れてもらって」
Rie fu「じゃあ、その頃の記憶が……」
直人「そうかもしれない。でも、こういうサウンドは僕にとっては実験的でもあったんですよね。シンプルなロックなんですけど、こういう曲はあまり作ったことなかったから。このアルバムを聴き直してても、この曲を聴いて一瞬驚く(笑)」
——Rie fuさんは歌ってみてどうでした?
Rie fu「意外とロマンティックな感じでしたね。なんかキラキラしてて、ロックというよりかはロマンを感じる」
直人「GLAYだね!」
Rie fu「やっぱり、そこに行き着く(笑)」