L.E.D. 『in motion』
[ interview ]
ポスト・ロック、バレアリックなダンス・ミュージック、あるいはジャズ/クロスオーヴァー……さまざまな音楽要素を溶け合わせ、流麗なサウンドスケープを独自のバランスで紡いできた7人組インスト・バンド、L.E.D.。
約2年ぶりのオリジナル・アルバム『in motion』では、スタジオワークに腰を据えて取り組み、ライヴ・パフォーマンスとは異なる緻密な音像を構築。また、Salyuや志人というゲスト陣が、これまでにないポップな手触りやフレッシュネスを吹き込んでいる。美しく、そして耳新しいこの新作について、メンバーの佐藤元彦(ベース)とオータコージ(ドラムス)に話を訊いた。
バンド編成でも人間臭さが全面に出てこないもの
――フル・アルバムは2年ぶりですけど、その間にはライヴ盤とEPを出されているし、快調に活動されている印象です。
佐藤「メンバーそれぞれ別のバンドもやってますけど、2009年にファースト・アルバムを出してからは普通にバンドを回す感じで活動できてますね。作品を作って、ライヴやってという」
――L.E.D.の音楽はさまざまな要素が混ざっていて、言葉で説明しにくいところがあると思うんですね。もともとどういうイメージで始められて、いまのサウンドになったのでしょうか。
佐藤「90年代後半から、ポスト・ロック系のインスト・バンドや、打ち込みのエレクトロニックな音が盛んになってきたじゃないですか。その頃、僕は歌モノのバンドをやってたんですけど、そういうムーヴメントに魅せられたんです。それまでバンドをやってきたので楽器を手放す方向にはいかなかったんですけど、バンド編成でも人間臭さが全面に出てこないものをやってみたいなと」
――それで打ち込みのエレクトロニックな要素を採り入れたと。
佐藤「メンバーそれぞれのプレイヤビリティーを発揮できるアンサンブルと、打ち込みならではのサウンドを混ぜてみたいというイメージがありました」
――ロータスとか、エレクトロニカ以降のジャム・バンドと共通するところもあるかとも思ったんですが。
オータ「ジャム・バンドとはよく言われるんですけど、意識したことはなくて。そう言われるのは、たぶんメンバーみんなが適当だからでしょうね(笑)。決め事が嫌いで、セッションの延長で演奏する人間が多いので、結果的にジャム・バンドっぽくもなってるんじゃないですかね」
――楽器編成が音楽性を決めるところもあると思うんですけど、L.E.D.は加藤雄一郎さんのサックスがメロディーを担う曲が多いですよね。そこがひとつの特色に感じます。
佐藤「加藤くんはもともと別のインスト・バンドをやっていたんですけど、そのバンドがまさに僕がやりたいと思っていた〈フロアライクな音を生バンドでいかに鳴らすか〉というところを理想的なバランスでやってたんですよ。それでライヴ後にすぐに声をかけて、L.E.D.を始めたんです(笑)」
――加藤さんありきだったんですね(笑)。
佐藤「というのと、当時エレクトリック期のマイルス・デイヴィスに影響を受けたバンド――ウェザー・リポートとかをすごく聴いてたんです。加藤くんもそういった70年代のエレクトリック・フュージョンにすごく詳しくて。そういうのもひとつ要素としてやってみようかって話したのを覚えてますね」
――ウェザー・リポートが挙げられるのはよくわかりますね。洗練されたコード感やアンサンブルといったあたりが、L.E.D.と共通するんじゃないかと。
佐藤「影響は受けてますね。そのへんの音と、さっき言ったようなエレクトロニックな要素を混ぜて他にはない何かをやれるんじゃないか……という感じでいまに至ってます」