INTERVIEW(3)――個性的なアーティストとの意外な取り合わせ
個性的なアーティストとの意外な取り合わせ
――スタジオワークに特化したという以外に、今回のアルバムで意図したことはありますか?
佐藤「さっきの話と繋がることですけど、これまで以上にフロアへ対応した音を鳴らそうと考えました。プレイヤーが7人もいるバンドだったら普通取らないアプローチで、逆におもしろいものができるんじゃないかと思って」
――アルバムの前半はダンサブルでバンド感の希薄な曲が揃ってますね。
佐藤「フロアライクに踊らせたいっていうのはやっぱりありますね。あと今回は特にポップに受け止められる曲が集まったと思います」
――もともとメロディアスな要素の強いバンドだとは思うんですけど、確かに今回はとりわけポップですね。特にSalyuさんをフィーチャーした“空水になる”はポップソングとして成立してるなあと。
オータ「Salyuさんがインタヴューで〈自分の声は楽器だと思っている〉みたいに話してるのを読んで、L.E.D.とコラボしたら上手く溶け込むんじゃないかと勝手に思っていたんです。で、昔からの知り合いだったし、夏フェスでごいっしょする機会もあって、縁があるなと声をかけたらやっていただけて。“空水になる”は横山(裕章、キーボード)の曲なんですけど、Salyuさんのイメージとか声質とかを想定して曲を書いてきたんです。だから結構スムースに完成しましたね」
――またこの曲はタナカカツキさんが作詞というのが意外ですよね。
オータ「カツキさんには、ファーストではジャケット、セカンドではPVを手掛けていただいて。〈俺はもうL.E.D.のメンバー〉とおっしゃってくれて」
佐藤「だから今回もどうしても参加してほしくて、作詞を無茶振りしたという(笑)」
オータ「もともと昔のポップスとか歌謡曲の歌詞に造詣が深い方なんですよ。だったら書いてもらったらおもしろいんじゃないかと思って。ただ、カツキさんは最近だとサウナにものすごく傾倒してるんで、〈サウナの歌詞だったらどうする?〉なんて話してたんです。でも、いざ届いたらものすごく壮大な歌詞で」
佐藤「〈カツキさんやっぱすごいねえ〉ってね」
オータ「そう話してたんですけど……よくよく読んだら結局サウナのことなんですよ。〈あたたかい/つめたいを/くりかえす〉とか〈恍惚が/やがて来る〉とか。2番の歌詞なんて各行の頭文字を縦読みすると〈さ、う、な、だ、い、す、き〉になるんですよ!」
――むちゃくちゃテクニカルな作詞術が(笑)。
オータ「そういうのも込みでカツキさんワールドにしっかりなっていて、結果的に良かったですけどね(笑)」
――コラボ曲だと他にラッパーの志人さんをフィーチャーした“賽の河原 ~八俣遠呂智の落とし子と鬼八の祟り~”があります。これもかなり意外な取り合わせに感じました。
オータ「これは僕の作曲なんですけど、サンプリングのループがベースになってるんですよ。メンバーにヒップホップっぽいトラックだねと言われて、じゃあラッパーの方とコラボしたいと言ったら、佐藤が〈志人くんがいいんじゃない?〉って。実はセカンド・アルバムの時から声をかけていたんですけど、タイミングが合わなくて」
佐藤「直感的にうちらと合うんじゃないかと思っていて、ずっといっしょにやりたかったんですよね」
――ヒップホップ的なループで始まりますけど、途中からサウンドがガラリと変貌しますね。
オータ「うちのバンドは打楽器隊が3人いるんです。だからパーカッションがメインの、ライヴで弾けられる曲にしたくて、後半は打楽器で押し切るような展開になりました。この変則的な展開にラップが乗ったらおもしろいんじゃないかと」
――サウンドも斬新ですけど、志人さんのラップもかなり特異ですよね。日本の神話をモチーフにしたようなリリックをものすごい勢いで畳み掛けている。
オータ「この曲における僕のラップのイメージを細かくディレクションしたんですけど、でも、志人さんの自由にやっていただいても構わないと伝えたんです。どうするかはお任せしようと。結果、自由にやっていただきました(笑)。ここまでみっちりラップが詰まったものになるとは予想してなくて、びっくりしましたね」
佐藤「最初に聴いた時は、インパクト強すぎてどう受け止めていいか戸惑いもあったんですが(笑)、俯瞰で見たら、とんでもないものになってるなと」