LONG REVIEW――0.8秒と衝撃。 『NEW GERMAN WAVE 4』
偏執的に組み立てられたビートの洪水
『NEW GERMAN WAVE 4』というタイトルや、〈Mad Drumming〉という〈1~7〉の番号がつけられた同名曲が並ぶトラック・リストを見たときは、〈かなりミニマルな作品なのでは?〉と身構えもしたが、再生ボタンを押して、にやけ顔に変わるまでにそう時間は必要としなかった。ラウド・ロックもインダストリアルもノーウェイヴも飲み込んだ、カンフル剤ばりの扇動型ボディー・ミュージックは本作でも健在。これまで以上に多彩な音色のウワモノが立体的に配置され、一瞬現れるデトロイト・テクノ的な展開もスリリングな“Mad Drumming 1”を筆頭に、偏執的に組み立てられたビートの洪水が押し寄せてくる、まぎれもないハチゲキのアルバムである。
リスニング環境がパソコンというリスナーも増え、〈歌さえ聴こえていれば、ベースがほぼ消えていても気にしない〉なんて話も小耳にはさむようになったが、インタヴューのたびに最近仕入れた名盤のレコーディング秘話を嬉々として話してくれる塔山忠臣のような音フェチのロック・ピュアリストからすれば、それは由々しき事態と言えよう。だからこそ、彼はメロディーや歌詞の重要性も十分認識したうえで、ひたすら〈聴いたことのない音〉を追求し、そのおもしろさを提示し続けているように見える。
“Mad Drumming”以外の2曲はメロディアスな曲で、特にハチゲキ流サイケデリック・フォークといった感じの“UKuLeLe HiBisQs”は名曲だが、ここまでやったらバランスを一切気にせず、9曲とも〈Mad Drumming〉で構成されたアルバムにしちゃってもよかったかも……なんて思いつつ、とにかくユニークな音が詰まった作品なので、ぜひデカイ音で、隅々まで聴いてみてください。
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