UKでニューウェイヴ運動が盛んだったまさにそのとき、〈白いドレッドロックス〉との異名を持つエイドリアン・シャーウッドが、ロンドンで新たなレーベルを立ち上げた。あれから30年、レゲエの枠に囚われず、さまざまなエッセンスを呑み込みながら攻撃的なダブ・サウンドをクリエイトしてきたOn-Uの歩みを、いま一度振り返ってみよう
写真/Kishi Yamamoto
何といまから30年も前のことなのである。UKにおいてのレゲエ/ダブを代表するレーベル、On-Uが設立されたのは30年も前のことなのである。ファウンダーはもちろんエイドリアン・シャーウッドだ。
58年に生まれたエイドリアンは、幼い頃からスカやロックステディに親しんで育ったのだという。75年に最初のレーベル、カリブ・ジェムズに関わるようになり、プリンス・ファーライやレヴォリューショナリーズを手掛け、78年にはドクター・パブロと共にヒット・ランを、さらには4Dリズムスを設立し、クリエイション・レベルをプロデュースするなど経験を積んだ。その後、それまでのキャリアをアップグレードするかのように、79年にOn-Uを設立。80年にニュー・エイジ・ステッパーズとロンドン・アンダーグラウンドのカップリングで7インチ『Fade Away/Learn A Language』を、続いて81年にアルバムとしてニュー・エイジ・ステッパーズ『The New Age Steppers』をリリースした。初っ端からして然りだが、On-Uは当時のパンクやニューウェイヴにおけるレゲエやダブのムードを牽引していく。レゲエ/ダブを主役としながら、最初期のヒップホップや多様なエレクトロニック・ミュージックといった周辺の音楽と呼応し続けていくようになる。
写真/Kishi Yamamoto
そしてこの1年、リトル・アックスやリー・ペリーの新作のほか、ニュー・エイジ・ステッパーズ、アフリカン・ヘッド・チャージ、ダブ・シンジケート、シンガーズ&プレイヤーズの名作3枚が〈Trifecta〉シリーズとして紙ジャケ仕様でボックス・セット化されるなど、設立30周年を祝ったリリースが続いている。
スキンヘッドの白人エイドリアンを中心に、紆余曲折はあっただろうが、30年もの間、長きに渡ってUKのダブ・シーンに必須のレーベルとして君臨するOn-U。いまこそ改めてプレイ・ボタンを押してみるのも悪くない。
▼エイドリアン・シャーウッドがリマスタリングを手掛けた3枚組のボックス・セットを紹介。
左から、ニュー・エイジ・ステッパーズ『Trifecta』、アフリカン・ヘッド・チャージ『Trifecta』、ダブ・シンジケート『Trifecta』、シンガーズ&プレイヤーズ『Trifecta』(すべてOn-U/BEAT)