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スタインバーグ&ボストン響『コンプリート・RCAレコーディングズ』(4枚組)~未発表録音3曲を含む集成!

スタインバーグ

名指揮者ウィリアム・スタインバーグ最晩年のボストン響とのRCAへの全録音を集成。初発売3曲を含む充実のセット。


名指揮者ウィリアム・スタインバーグは、1899年8月1日にケルンで本名ハンス・ヴィルヘルム・シュタインベルクとして生まれ、地元の音楽院で指揮者のヘルマン・アーベントロートとクララ・シューマンの弟子であったピアニストのラッツァロ・ウツィエッリに師事。1920年に卒業すると、ケルン歌劇場でオットー・クレンペラーのアシスタントになりました。1929年にフランクフルト歌劇場の音楽監督に任命されましたが、1933年にナチスによってその職を解かれてしまいました。ユダヤ文化連盟の後援の下、フランクフルトとベルリンで指揮し、1936年にパレスチナ管弦楽団(現在のイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団)を引き継ぐためにイギリス委任統治領パレスチナに移住。トスカニーニの招待で、彼は新しいNBC交響楽団の結成と訓練を支援するために1938年に米国に移住。1945年にバッファロー・フィルハーモニックの音楽監督に就任し、このオケを気に入ったスタインバーグは「バッファロー・ビル」と自称していたほどです。

1952年にはピッツバーグ交響楽団の音楽監督に就任。1976年までの長期間にわたって同楽団を指揮し、米キャピトルやコマンド、エヴェレスト・レーベルから発売された多数の録音でその指揮者としての優れた資質が世界的に知られるようになりました。1969年からはエーリヒ・ラインスドルフの後任として1972年まで名門ボストン交響楽団音楽監督を兼任し、キャリアの頂点に達しました。米国トップ10のオーケストラ中、2つのオケの音楽監督を同時に務めた指揮者はスタインバーグが初。スタインバーグは、ボストン就任の条件にピッツバーグの職を続けることを盛り込んでいたのです。

しかしスタインバーグとボストン交響楽団のRCA録音は、残念ながら短命に終わりました。それはレコードが売れなかったためではなく、アメリカのレコード産業全体を悩ませていた売り上げの急落とコストの高騰によるもので、このスタインバーグ時代の1970年にRCAは1929年のセルゲイ・クーセヴィツキーとの初録音以来52年間続いたボストン交響楽団との専属契約を終了せざるを得なくなったのです。この状況に飛びついたのがアメリカ市場でマーケットシェア拡大を狙っていたドイツ・グラモフォン(DG)で、長期の契約を結びスタインバーグの後任となった小澤征爾を中心に当時若手だったティルソン・トーマスやクラウディオ・アバドを起用して膨大なディスコグラフィを築き上げることになります。スタインバーグはDGにもLP3枚分の録音を残していますが、1969年に体調を崩して指揮活動を縮小せざるを得ず、ピッツバーグに専念するため1972年にボストンを辞任しています。それゆえ「スタインバーグは、前世紀後半の偉大な指揮者の中で最も録音が不足している」(2018年英『グラモフォン』誌、ピーター・クアントリル)と称されるほどです。

ボストンでの初録音となったシューベルトの「ザ・グレート」(CD1)は、スタインバーグにとって唯一の録音となったもの(シューベルト作品では2種類の「未完成」録音がキャピトルとコマンドにあり)。またブルックナーの交響曲第6番(CD2)は、アメリカのオーケストラにとって同曲の初録音となったもので、生前ブルックナー指揮者として高く評価されていたスタインバーグの貴重な遺産です(スタインバーグによるブルックナー録音は、ピッツバーグ響との第4番[改訂版使用、モノラル]・第7番[ステレオ]が残されており、ボストン響との第8番のライヴ映像のソフト化されていました)。2曲とも「どちらも生き生きとしたインスピレーション溢れる名演で、これらの交響曲の演奏にありがちなむやみな壮大化とは無縁核心に迫る解釈が潔い。スタインバーグのディスコグラフィ中最高の出来で、それぞれの交響曲の最高のレコードに数えられる』と称賛されています(2004年リチャード・フリード)。・L・ホームズは「Conductors on Record」の中でまたこの2曲はスタインバーグ自身のお気に入りでもありました。

CD3のショーピースは、もともとカタログ番号LSC-3155としてスタインバーグ指揮でまとめられる予定でしたが、体調不良により収録が予定通りに進まなかったため、小澤、ラインスドルフ、フィードラー指揮の小品を加えて1972年に同じ番号で発売されました。今回のCD化では、未発売だったスタインバーグ指揮の3曲(メンデルスゾーンの八重奏曲~スケルツォ、ストラヴィンスキーの「幻想的スケルツォ」「ロシア風スケルツォ」)を加えてオリジナルのアルバム構想の一端を再現し、さらに実際に発売されたアルバムから小澤、ラインスドルフの小品を加えてあります。

LSC-3155に収録されていたアーサー・フィードラー指揮のドヴォルザーク「謝肉祭」序曲は、CD4に「新世界より」と共に収録されています。元ボストン交響楽団のヴァイオリニストでボストン・ポップスの産みの親であるフィードラーは、ボストン・ポップスではかなえられなかった有名交響曲の録音が長年の夢であり、それが1970年にようやく実現し、フィードラーがボストン交響楽団を指揮した唯一の録音となったのです。

すべての録音は、3トラック(CD 1)、4トラック(CD 2、3 [1-6]、4)、および 2トラック(CD 3 [7-9]のオリジナル・アナログマスターから、24ビット/192 kHzテクノロジーで新たにリミックスおよびリマスターされている。
(ソニーミュージック)

【曲目】
<CD1>
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調 D.944「ザ・グレート」
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1969年9月29日、ボストン・シンフォニー・ホール

<CD2>
ブルックナー:交響曲第6番 イ長調 WAB.106
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年1月19日、ボストン・シンフォニー・ホール

<CD3>
デュカス:交響的スケルツォ『魔法使いの弟子』
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年10月26日、ボストン・シンフォニー・ホール
R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』Op.28
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年1月12日、ボストン・シンフォニー・ホール
メンデルスゾーン:八重奏曲 編ホ長調 Op.20 MWV R20 ~ 第3楽章:スケルツォ[初発売]
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年10月26日、ボストン・シンフォニー・ホール
サン=サーンス:交響詩『死の舞踏』
ストラヴィンスキー:幻想的スケルツォ[初発売]
ストラヴィンスキー:ロシア風スケルツォ[初発売]
[演奏]ウィリアム・スタインバーグ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年1月12日、ボストン・シンフォニー・ホール
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『ペトルーシュカ』 ~ ロシアの踊り
[演奏]小澤征爾(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1969年11月24日、ボストン・シンフォニー・ホール
コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』~ウィーンの音楽時計/皇帝と廷臣たちの入場
[演奏]エーリヒ・ラインスドルフ(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1969年11月24日、ボストン・シンフォニー・ホール

<CD4>
ドヴォルザーク:
交響曲第9番 ホ短調 Op.95『新世界より』
序曲『謝肉祭』Op.92
[演奏]アーサー・フィードラー(指揮) ボストン交響楽団
[録音]1970年1月5日、ボストン・シンフォニー・ホール

スタインバーグ

ウィリアム・スタインバーグ
William Steinberg, 1899年8月1日~1978年5月16日
ケルン出身の、ユダヤ系ドイツ人の指揮者。ケルン音楽院に学び、指揮法をヘルマン・アーベントロートに師事。ケルン歌劇場の第2ヴァイオリン奏者となったところを指揮者のオットー・クレンペラーに認められ、彼の助手となり、クレンペラーが同歌劇場を去った1924年には首席指揮者に昇格しました。1930年にフランクフルト歌劇場の音楽監督に就任したが、1933年にナチスによりその地位をはく奪されたため、1936年にイギリス委任統治領パレスチナに移住した。同地でブロニスワフ・フーベルマンらと共にパレスチナ交響楽団(現イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団)を結成。同地を訪れた大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニに認められ、1938年に渡米してNBC交響楽団を指揮。その後、ニューヨーク・フィルやサンフランシスコ歌劇場に客演し、1944年にアメリカ市民権を獲得。

1945年から1952年までバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、1952年から1976年までのピッツバーグ交響楽団の音楽監督を務め、その間、1958~60年にロンドン・フィルの首席指揮者、1966~68年にニューヨーク・フィルの首席客演指揮者、1969年から1972年までボストン交響楽団の音楽監督という要職を兼任しました。

録音活動はSP時代の1928年にフーベルマンと共演しチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を録音。これはSP時代の決定的名盤と言われたもので、日本でも発売されたため、古くからその名は日本のファンにも知られていました。戦後はピッツバーグ交響楽団との米キャピトル、米コマンドへの録音が有名で、ボストン交響楽団の音楽監督時代には米RCA(シューベルトの第9、ブルックナーの第6、管弦楽曲集)と独DG(ホルストの惑星、R.シュトラウスのツァラトゥストラ、ヒンデミット作品集)に各3枚のLPを録音しました。

息子のピンカス・スタインバーグ(1945~)も指揮者で、NHK交響楽団へたびたび客演するなど、現在巨匠として活躍しているのはご承知の通りです。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)

掲載: 2024年02月22日 12:00

更新: 2024年04月15日 19:00