monobright(3)
――じゃあ次回やりましょう、それは。
桃野 漫画で100も挙がらないですけど(笑)。
――漫画以外の読み物とか映画もアリで。
桃野 いやあ、それでもギリギリですけどね。
――とは言え、ここまでの話をきいてると、まあ、現代っ子っていうとオジサンっぽいけど、桃野くんは情報化社会の申し子だね、完全に。その昔、ラジオで渋谷陽一さんが「いまの若い子はロック聴いてる裏でおニャン子クラブ聴いてるんでしょ」みたいなことを言ってましたけど、そういう時代なんですよね。
桃野 僕らの世代は、そういう堅さっていうようなものはないですよね。でも、堅くないなりにもモヤモヤしてるってのはありますから。やっぱ単純に上の世代になめられてるっちゅうか、世代ならではの悔しさってのもありますよ。僕らの世代は、酒鬼薔薇聖斗の事件に象徴されるような〈キレる若者〉って言われてたし、それでなんかヘンな距離の置かれ方をされたっていうか。たしかに、モヤモヤを溜め込んでキレるかも知れないけど、そういうなかでのロックだったりとか、誠実なものも絶対あると思ってるし、そういうのを音楽にしたいですね、やっぱり。
――最後に、100枚目はmonobrightってことで、ちゃっかり挙げてるけど(笑)。
桃野 それも『monobright two』が(笑)。
――ここは、いままでのどの作品でもなく、ニュー・アルバム『monobright two』なんだ。
桃野 ダントツで〈two〉ですよ。ツェッペリンで言う『Led Zeppelin II』ですね(笑)。
――いわゆる出世作だ。でもまあ、『monobright two』はここに挙げた99枚から授かった滋養を、ヘタに整理しないで自然に音に注ぎ込んでる印象があるよね。ヘンにバランスとっていないとでもいうか。
桃野 まさにそうですね。いま考えれば、前の『monobright one』のときは結構バランスを取ってたような気がしますね。その結果、伝え切れなかった部分もあったんですけど、〈two〉では全然クリアーっていうか、たしかに授かったものを、そのままやっちゃってるぐらいの感じですよね。
――『monobright two』を作るにあたって〈ニューウェイヴ〉みたいなテーマがあったそうだけど、monobrightがやればおのずとまともなニューウェイヴにはならないだろうとは思ってたでしょ?
桃野 そう、いろんなものを授かってきたからいろんなエキスが出るし、他のメンバーのエキスも含まれるし、ニューウェイヴって言われればニューウェイヴだし、J-popって言われればJ-popだろうし、もう何でもいいっていうか。とにかくmonobrightってのが見せれてるっちゅうか、自分たち自身が手応えを感じてるものなんで。柱がね、出来上がった感じですよ。なんやかんやでいままでは見つかってなかったものが、今回はこう、バシッと出た気がするんですよね。それが〈two〉の強みっていうか、いままでにないmonobrightの感じになったと思うんですけど。
――やっぱり、ツェッペリン同様、出世作になるわけだ(笑)。
桃野 結果はどうなるんでしょうねえ。ちなみにレディオヘッドのセカンドはどうなんでしたっけ?
――出世作っていうわけではないけど、セールスは更新してるよね。
桃野 ニルヴァーナはセカンドが『Never Mind』ですよね。
――そうそう。セカンド出世作説ってのはあながち間違ってないね(笑)。ではまあ、『monobright two』についてはbounce誌「309号」でさらに詳しく。ところで、最近はとくにこのへんが気持ちよく聴けてるっていうのはある?
桃野 リスナーとしては昔に立ち返ってるような感じで、いま改めてアメリカン・ハードコアを探してるっちゅうか。マイナー・スレットとか、フガジとか、バストロとか、セバドーとか。このへんの音は、それこそ、いまライヴを一緒にやってるDOESのメンバーが大好きで、いっつも打ち上げとかでもそういう話になるんですよね。やっぱりこう、男だけにわかりそうな感じっちゅうか。まあ、女の人でも聴く人はいると思うんですけど、あんまりいないじゃないですか。アメリカン・ハードコアっちゅうと、速い、うるさい、ワケわかんないみたいな、三拍子揃ってるというか(笑)。やっぱりそれにいま触れながらも、ジェイムス・テイラーの歌モノにもやられてるっちゅうか(笑)。
――すごい振り幅だねえ。
桃野 衝動と歌っていう……なんかが合致するものをいま探し中ってところです。
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