monobright(2)
――それが高校3年?
桃野 ですね。で、卒業して札幌に行くんですけど、聴いてみたいなと思ったCDも別海町ではすぐに買えなかったから、そういう鬱憤をやっと晴らせるぞーって気持ちで、明るい気持ちで専門学校に通い始めて。で、さっそく買ったのがフレーミング・リップスの『The Soft Bulletin』。後追いですけど。それと、すごく聴きたかったけど聴けなかったアメリカのインディー物とか、タワレコに行けばフツーに置いてあるし……ただ、欲しいけど金がねぇ~って(笑)。どんなに切り詰めて頑張っても、月にアルバム5枚が限界だったんで、その5枚をどうするかっていうのを毎日のようにタワレコに行って眺めては悩み、でも買えないなあ、一食分削ったら買えちゃうかなって。とにかく、専門学校に通ってた2年間は我慢の2年でしたね。でも、親に「教材買うから」みたいなウソついて、余計に仕送りしてもらったりしてましたけど(笑)。でまあ、そうこうしながら、そのときの僕にとっていちばん衝撃だったクワージとかエリオット・スミス、ヒートマイザーあたりに出くわしまして。エリオット・スミスの『Figure 8』にあやかって、〈Figure 8〉って3ピースのバンドを組んだのがその頃。
――おっ、ようやくバンド結成に行き着きましたね!
桃野 そう、そのときに瀧谷とも出会って、一緒にやってたんですよ。当時どんな曲流行ってたかって言ったら、まあ、ウィーザーみたいなものを目指していて。エリオット・スミスみたいなのはメンバーに理解されないだろうなあと思ったし、実際に瀧谷ともう一人のやつには全然理解されなかったんで、まあ、それは心にしまっといて、〈グリーン・アルバム〉も流行ってたから、とりあえず。でも、あまりにもコーラスワークが出来なくて(笑)。で、決定的だったのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが出てきたとき。あっ、オレたちには無理だな、この路線って(笑)。それで違うことをやりたくなって、バンドを解散して、いまのmonobrightを始めるきっかけっていうか、パソコンを買ったんですよ。一人で作り出すようになってから、音楽への向き合い方が変わっていきましたね。で、やっぱバンドをやってないと腕が鈍るなと思って、並行してフィッシュマンズみたいなバンドのサポートをしてたんですよ。そのときのメンバーが、知識だけは豊富な(笑)メンバーで、そこでようやくビートルズとかXTCを知ったんですよね。で、昔の音楽を掘り下げるようになったんですよ。サポートしてたバンドがいつも練習してたスタジオも、老夫婦2人でやってるスタジオで、謎にモンタレーのヴィデオが流れっぱなしになってたりとか。
――そこの若いの、こういうものを見ておけ!とでも言わんばかりに(笑)。
桃野 そうそう(笑)。とにかくライヴ映像がずっと流れてて。そのおかげでジミヘンとかボブ・マーリーを知ることができたんですよね。それがきっかけでスライとか黒っぽい音楽にも手を出したし。
――そういえば、100枚のなかにブラック・ミュージックはほとんどないよね。
桃野 あまりにも濃そうで、好きになったら出てこられなくなるんじゃないかと思って、意識的に歯止めをかけてるんですよ。プログレもそうだったんですけど、イキ過ぎると自分に支障をきたすんじゃないかって。
――あと、基本的に洋楽が多い。
桃野 そうですね。やっぱり高校のときからホントにベタな洋楽志向で。でも、ナンバーガールとかくるりとかはすんなりと入っていけましたね。ナンバーガールの『SAPPUKEI』なんか死ぬほど聴きましたから。もう、ビリビリビリビリきますもんね、音が。くるりの『図鑑』もそう。ちょっと前だと、ゆらゆら帝国の『空洞です』がとんでもなく泣けてきましたね。あんなことやられるとなんか、ホント嬉しくなりますね。実は『空洞です』を聴くまで、僕は一回もゆら帝を聴いたことがなかったんで、こんなバンドを聴き逃してたんだって悔しくなりました。最低だオレ、って(笑)。それでライヴも観に行って。わー、妖怪出てきたーって(笑)。
――そうだね(笑)。
桃野 僕、妖怪とかすごく好きなんですよ。「ゲゲゲの鬼太郎」とか夢があるっちゅうか。みんなの心のなかに存在してる思いがイメージとなって妖怪の姿になってるわけですよね。洋楽でいえば、それこそXTCとか、トッド・ラングレンとかは僕にとっては妖怪的存在ですね。
――たしかに、モンスターではなく妖怪だね。
桃野 モンスターってなんか信じられないですけど、妖怪って目に見えてないだけで心のなかにいるものだから。妖怪って、それこそ川に口が尖ってて禿げたオッサンがいて、それが河童に見えたとか、ありえそうな話もあるし、なんか夢があるっちゅうか、リアルな感じがするんですよね。
――「ゲゲゲの鬼太郎」で言えば猫娘とかさあ、最高だよなあ、あのキャラ。女性の二面性を表しているというかね。
桃野 いやあ、ああいう猟奇的な女の人、絶対いますよね(笑)……ああ、そういう意味では漫画とかも100枚のなかに含めてもよかったですね。
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