INTERVIEW(3)――人と人との繋がりを大事にしようと
人と人との繋がりを大事にしようと
──では、続けて曲ごとにお話を伺っていきましょうか。次の曲“Don't Worry”。
「ここで歌ってるKATちゃんとYUKAちゃんは、以前イヴェントでいっしょになった縁で。KATちゃんはニュージーランド人と日本人のハーフ なんですけど、すごく敬虔なクリスチャンで、この歌にあるとおり、なにか心の支えになる存在というのが神様であって、そういう大きな力にサポートされて るっていう話をよくするんですね。私も幼稚園の頃からキリスト教の学校に通ってたりするので、“Life is Like a Boat”(2004年のシングル)っていう曲でもそういったものをテーマにしていたりするんですね。宗教的な意味というよりは、なにか大きな力で支えら れてるっていう考え方から生まれた曲ですね」
──“STAR”は、井上陽水さんがモチーフになっている曲だとか。
「そうですね、陽水さんのツアーに参加した感想を歌にしたものです。ステージの上での陽水さんは星のようにキラキラ輝いているまさに〈スター〉とい う感じだったので、周りを華やかにしているその感じを音のポップ感で出してみました。レコーディングでは、ドラマの二重音声みたいに、英語と日本語が同時 に左右から聴こえてくるようなものを歌でやったらどういうふうになるかなあっていう発想で、(依布)サラサちゃんといっしょに録音したんですけど、さらに 娘さんのYUYUちゃんにも参加してもらって」
──陽水さんとのツアーはやはり大きな体験でしたか?
「そうですね。しゃべってる感じも普通じゃないというか、普通のことを普通には言わないというか、そういうところがいろいろ勉強になって。歌詞の詳 しいアドヴァイスをしてくださったりとか、そういったこともすごく勉強になったので、歌詞に対する考え方が変わったきっかけにもなりましたね」
──続いて、Curly Giraffeとの“Sunshine Forehead”。ここではいろんな楽器の音が持ち込まれてますね。
「このリズム感もメロディーも、Curlyさんのアルバムを聴いた後にワーッと出来たものなので、いろんな音を積み重ねていったっていうよりは、一 気に全体の音が鳴った感じなんですね。で、大学生で吹奏楽部に入っている弟に、フルートが吹ける友達を連れてきてもらってイントロを吹いてもらったりし て。これもまた繋がりというか、人と人との自然な繋がりをいちばん大事にしようと思ったこのアルバムらしいセッションになりました」
──“My start”は、竹本健一さん、ピーター・クヴィントさんとの共作ですね。
「竹本さんはCrystal Kayさんとか中島美嘉さんに曲を提供されてたり、ピーターさんはスウェーデンに住んでいて、ブリトニー・スピアーズに曲を書いてたり……そういう作家さ んたちが集まるセッションの会があって、2人とはそこで出会ったんですけど、そういうプロの作家さんと作るのもすごく新鮮な作り方ですね。自然な流れはあ りつつも、きちっと全体像が見えているというか、こういう曲だからブリッジにはこういうメロディーを足してみようとか、すごく作業がスムーズで、なにか方 程式に当てはめていくように曲を作っていく印象で、ここでも勉強になりましたね。アレンジはピーターさんとデータのやりとりで決めていくっていうイマド キっぽいやり方をしてるんですけど、音は60年代っぽいっていうところがおもしろいですね」
──“Gilles”では、2本のギターの音をずらして人力ディレイ的な効果を出したり、今作ではそういった音響的な遊びが多いですね。
「いかにアナログな、手作りな工夫によっておもしろいことができるかっていうことはいろいろ試してますね。例えばマイクを床に打ちつけてキックの音 にしたりとか、ギターのボディーをパーカッション代わりに叩くとか、あと“Don't Worry”では、高さが違うヒールでタップを踏んで、それを重ねてビートルズの“Blackbird”みたいなタップ音を出してみたりとか。打ち込みで どんな音でも作れちゃう時代だからこそ、そういうことをするのがおもしろいんじゃないかなと思って。機械に頼ることもありつつ、手作りな、人間味のあるこ とも入れたいっていう意識はありましたね」
──“Laundry”は、女の子らしい歌詞の失恋ソングですね。
「いっしょに歌詞を書いたYUI(RYTHEM)ちゃんとは、女の子が失恋してまた立ち直るみたいな話を、洗濯機がグルグル回っていくうちにどんど ん浄化されていく、みたいなことになぞらえた歌にしたいねって。洗濯機がグルグル回っている感じをギターのフレーズをループさせることで表現したりとか、 実際に洗濯機が回っている音をSE的に入れたりとか、そういう工夫もしてみました」