INTERVIEW(4)――なんだかんだで人間対人間
なんだかんだで人間対人間
――今回ジャケットのアートワークに関してもすごくいい出会いがあったそうですね。
向「そうなんですよ。最初は今回のジャケットは俺がやるよって感じだったんですけど、レコーディング直前まで色々直したりとかしてたから時間がなくて、ジャケットまで手が回んないなって思ってた時に、いつも使ってるスタジオでパーティーがあって飲んでたら、友達に〈ジャケットどうするの?〉って言われて〈いやあ、わかんないね〉って答えたら、〈一人やばい画家さんいるからホームページをチェックしようよ〉って。それで彼の、海老原靖さんって方なんですけど、ホームページを見たら、もうホントこれはやばいなと思って。根こそぎ持ってかれたみたいな感じだったんですよ。しかも近くに住んでるって言うから、〈絶対会いたい〉って話をして。でもジャケットとかは難しいかなって思ってたら、会ったら会ったで超意気投合しちゃって(笑)。超酒飲みで、俺も酒大好きだから、朝までドンチャン騒ぎしてから、〈さて、どうしよっか?〉って。忙しいなか書いてくださって、ありがたいなって」
――その方は音楽もお好きなんですか?
向「全然音楽好きじゃないんですよ。飲んだ後にリハーサル見に来てくれて、30分もいられなかったんですって」
――うるさくて?
向「それがうるさくてじゃなくて、彼は画家だからいつも一人で作業してるでしょ? 自分のなかのパッションがすごい人だから、絵を描いててエネルギーを全部出すらしいんですよ。それで俺らのリハーサルを見てたら、5人の出す音のエネルギーがすごかったらしくて、すごすぎていられなくなったって後で言ってて。俺もただうるさいだけだと思ってたから、それを聞いて安心して。その後にワンマンにも来てくれたんですけど、〈あれだけ苦痛じゃないライヴは初めてだった〉って言ってくれるぐらい好きになってくれて。そうやって意思疎通できた人といっしょに仕事ができて、お互い損得勘定なしに仲良くなれて、すごくよかったなって」
――いい出会いがたくさん詰まったアルバムなんですね。
向「めちゃくちゃそれはありますね。今回のタイトルはこれまで出会った一人一人に言ってあげたい言葉かもしれない」
――セカンドを作った次点では一度空になったっていう話でしたが、サードを作り終えたいまはどうですか?
向「いまはエネルギッシュですよ。これまでは一回アルバム作っちゃったら、しばらくボケーっとしてたんだけど、もうすでに次の曲どうしようって感じだから。いい方向を、みんなが同じ方向を見はじめてるんじゃないですかね」
――これからツアーも始まりますもんね。
織田「今回ファンの方を公募してPVを撮影したんですけど、その時に福岡からわざわざ来てくれた人がいるんですよ。今回初めて行く土地が結構あって、自分らの知らないところで来てほしいって願ってくれてた人のところにいけるんで、そこでいままでやってきたことをしっかり見せれたらいいなって」
――では最後に、向さんの代名詞である柏市、〈KCHC〉という言葉に対しての、現在の想いを話していただけますでしょうか。
向「〈KCHC〉っていうのは、そもそも俺たちが作ったものではなくて、俺たちの先輩方が作ったものなんです。俺たちにいろんな音楽を教えてくれた、その先輩方がいなかったらバンドなんてやってなかっただろうし。この前アンチノックでライヴだったんですけど、店員さんが俺のこと呼びに来て受付に行ったら、その先輩が一人いらっしゃってたんですよ。何年も会ってなかった方なんで、〈ご無沙汰してます。どうしたんですか?〉って訊いたら、〈kamomekamomeってお前のバンドだと思って、チラッと見に来たんだよ〉って。俺泣きそうなぐらい嬉しくなっちゃって。こういうことなんですよ、あの街の良さって。変な上下関係もないし、俺も自然とそういうふうに教えてもらえたから、年が下でも関係なく色んな話をしたいし、してもらいたい。そういう街だから好きなんじゃないですかね」
――音楽的な繋がりだけじゃない。本当に人と人との繋がりなんですね。
向「そうなんです。スタジオ、レコ屋、ライヴハウスが全部ある、ありがたい環境だと思います。けれども、なんだかんだで人間対人間だから。残るものは残るし、潰れるものは潰れるなりの理由があって潰れるんだろうし。俺は柏市にいい友達がいるから、だから大好きなんです」
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