INTERVIEW(2)――やっぱりワビサビがないと
やっぱりワビサビがないと
――スプリットに入っていて、今回のアルバムにも収録されている“この時期のヴァンパイア”は、中瀬さんが再加入して初めて作った曲だったりするんですか?
向「そうですね。あれが初めてですね」
――賢三さんのヴォーカルを活かした作りになっていて、まさに大きな武器を手に入れたって感じですよね。
向「そうですね。彼の声は、俺大好きだから。すごい大ファンなんですよ、彼の。一気にグワッと上げてくれるから、あの声が」
――曲作りは順調に進みましたか?
織田「セカンド・アルバムを出してからスプリットまで曲作りをしてなくて、スプリット出すってなってから曲を作りはじめたんですけど、結果ああいう曲ができて、自分ではわからなかったけど、方向性は定まってたのかなって」
――セカンドはファーストに比べると、パッと聴いた感じだとコンパクトでシンプルだけど、細かく聴くと非常に入り組んだ、複雑な構造を持った曲が並んでましたよね。新作もその方向性を引き継ぎつつ、よりダイレクトになったような印象も受けます。
織田「(方向性を)話し合ったりはしないですね。今回に関しては8か月ぐらいの作曲期間で“この時期のヴァンパイア”以外の9曲を仕上げたんですけど、スタジオ入って出た音で判断していくっていう感じでした。ある程度形が見えたら、そこで何をしようかなっていうのは各々で考えて」
――前作は、シンプルに言うと、お客さんといっしょに盛り上がれるっていうのも方向性の一つとしてあったと思うんですけど、そういう部分ではどうですか?
織田「それはセカンドの頃とあんまり変わってないとは思うんですけど、やっぱりライヴで見えてくるもの、対バンで見てきたものからは影響あると思います。いっぱい色んなバンドと知り合って、ライヴ観て、そのなかで頭に残ってるものとか」
――具体的に曲作りで意識した部分は?
織田「さっきおっしゃってたように、入り組んでる部分が聴こえないとまずいんですよね。〈もっともっと〉って感じなんですよ、曲作りに関して言うと。〈もっと上げていこう〉みたいな。そうやって詰めて作ると、〈どこを聴かせようかな?〉ってなるんですよね」
――ああ、どのパートも詰まってたらそれはそれでフラットになっちゃいますもんね。
向「大変なことを並べてるバンドって腐るほどいるけど、普通に聴いてると疲れちゃうんですよね。やっぱりワビサビとかがないと。歌をつけるのがいちばん最後で、出来上がった曲にメロディーをつけて歌詞を乗っけて、って作業をずっとしてるんで、AからZまで詰まってると俺は(歌を)つけられないし(笑)。その線引きは必要だと思うんです」
――確かに、〈すごい〉と思うバンドと〈かっこいい〉って思うバンドってまた違うというか。カモメは〈すごい〉だけじゃなくて、揺さぶられるものがちゃんとあるバンドだと思うんです。
向「嬉しいです。ありがとうございます」
織田「〈すごい〉って言葉自体が集約しちゃってるじゃないですか? かっこいい〉とか〈エロい〉とかじゃなくて、〈すごい〉って言われると、リアクションに困るっていうか。だから、〈どうやって聴かせるか〉っていう発想になるんですよね」
――演奏を組み立てる段階での向さんの関わり方は?
向「最終的に俺が曲を決めるんですけど、すごいシンプルで、たとえば色んなリフがあったら、〈これは残す!〉〈これは要らない!〉〈これは……もうちょっと待って!〉みたいな(笑)。まあ〈待って!〉って言う時は、大抵使わないんですけど(笑)」
――(笑)プロデューサー的なポジションなんですね。
向「各々気に入ってるフレーズはなるべく活かすようにして、それ以外のところは歌がうまく乗るんであればそっちのほうを優先してもらって」