インタビュー

LONG REVIEW――te 『敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。』

 

te_J170

歌唱力豊かな人を賞して、〈歌心がある〉と言われる。元々は〈和歌の素養・心得がある〉を意味したこの言葉は、決してその用途を歌のスキルやセンスの称賛に留めない……つまり、〈歌を感じさせる〉表現全般に用いることができるだろう。楽器演奏や歌詞は当然のこと、朗読や詩などもその抑揚やテンポ、語感や押韻によって歌心が宿るはずだし、それは改めて言わずとも、誰もがなんとなく感じ取っている普遍的な感覚だと思う。

前置きが長くなったが、歌に頼らずともそんな〈歌心〉を感じさせるインストのバンドはいまやたくさんいる。だがそのなかでも別格なのが、このteだろう。新作〈敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。〉は、初めてメジャー・レーベルの協力を受けて制作された4作目だ。時にそよ風のように、時に豪雨のように降り注ぐギターと、複雑にシンコペートする強靭なビートを軸にした、圧倒的にフィジカルなアンサンブルは他ではちょっと聴けない。曲調もハードコアなものだけでなく、ダビーな残響音を配したディープなミディアムや、ROVOさながらの人力トランス、コーラス隊の合唱を採り入れたものなど、多岐に渡っている。そんなサウンドを支える各楽器の素晴らしい音作りや鳴りの良さにも注目してほしいし、ちょっと気恥ずかしいくらいポップな〈おいしいメロディー〉も照れることなく、全力で演り切る潔さも彼らならではだろう。

そして、恒例の長い表題と曲名もじっくり読み解きたい。本作におけるそれは、よくある事象を独特の解釈で定義するだけでなく、選び抜かれた言葉の語感や音節が活き活きと踊っているようにも感じられる。音と言葉の細部までぎっちり詰め込まれた、彼らの歌心に触れてほしい。

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年05月26日 17:59

更新: 2010年05月27日 15:09

65448