LONG REVIEW――PE'Z 『i WANT YOU』
PE'Zのサウンドは、いつだって聴き手を昂揚させてくれる。キャッチーなメロディーと強靭なリズムを調和させるシンプルな志向は、結成から11年目を迎えても何らブレることがない。その一方で、彼らが何かの〈メッセージ〉を発する機会は多くなかったように思う。なぜなら、すでに圧倒的なポジティヴィティーがその音に宿っていて、ことさら彼らが語らずともその音に触れれば、PE'Zが音楽を通して伝えたいことは明確に感じ取れるからだ。それゆえか、彼らの曲名には人を喰ったような意味不明なものも多かったのだが、今回届いた新作のタイトルはズバリ『i WANT YOU』。これまでにないストレートなタイトルに、彼らの変節を窺うのは安直すぎるだろうか?
前作『1・2・MAX』は運動会でお馴染み〈Csikos Post〉のカヴァーで始まったが、本作はベートーヴェンの交響曲第5番〈運命〉で幕を開ける。これまた大ネタすぎるカヴァーだが、勇壮でドラマティック、そしてやんちゃなアレンジで一気に駆け抜けていくその様は、どんな曲をやってもPE'Zの音になるという自負すら窺わせる。そして続く表題曲はダンス・ミュージック色も濃いドラムとベースのコンビネーションに乗せて、ヒイズミが〈Want You! Want You!〉とアジりまくる! 他にもディスコティックな“ヘイ! ロボ・ダンシン”や、緻密なリズムのバトルから開放感に溢れたサビへと急上昇する“SPLASH音頭”、PE'Z流ハード・ロックな“ハイウエスター”など聴きどころは多いが、特筆すべきは“灼熱のLAバンピー~愛と平和のSAMBA~”だろう。十八番のサンバ・ビートが躍動するパーティー・チューンだが、曲名もさることながら(LAバンピー=ラヴ&ピース)、サビがスケールの大きな〈合唱〉なところにもある種のメッセージ性を感じさせる。PE'Zのストレートな想いが改めて伝わる、そんな『i WANT YOU』なのだ。