インタビュー

INTERVIEW(2)――資生堂のイメージ

 

資生堂のイメージ

 

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――ちなみに、石井さんから見て最初の段階からだいぶ変わったと思う曲はどれですか?

「“NUMANS-Roxette”とか。あとは……“Mecca”。そうでもないかな? “Mecca”はベーシック・トラック、アタマからケツまでの構成は出来てるんだけども、ドラムとベースの部分には少しのシンセしか入ってないっていうものを、このバンドを結成してみんなで集まって、〈じゃあ各々曲、作ろうよ〉ってなった時にKoziさんが持ってきたんですよ。で、俺が〈じゃあ一回預かって、ウワモノのシンセとか乗せますわ〉って。だから完全に足し算ですよね。結局はベーシック・トラックも作り直してるんですけど、そこに歌とシンセを足して作ったっていう曲ですね。2ぐらいのものが10になった。あと“NUMANS-Roxette”はSADIEさんが作ってきた曲なんですけど、これは曲としてちゃんとしてたんですよ。してたんだけども、〈こうやったらもっとおもしろい曲になるな〉って思ったところがあったから、楽曲の雰囲気自体を……コード進行とかもそうですけど、大幅に変更してフィニッシュして。そういうところでは、これがいちばんいじくってる。で、逆に受け取ったトラックをそのまんまやってるっていうのが、“THE 艶℃ BABY”なんですけどね。これもSADIEさんの曲で。だから何でもかんでも直したいとかそういうことではなくて、曲として構築されててなんもすることねえなって思ったら、そのままやるっていう」

―― “NUMANS-Roxette”は、具体的にどう変えたんですか?

「なんか、いわゆる歌モノではなかったんですよね。結構この曲、切ないじゃないですか」

――はい。本当に。

「うん。だけど、そういう要素が皆無だったんですよ。でもそうしたほうが絶対いいなと、ちょっと資生堂のイメージを漂わせたほうがいいなと思って(笑)。あと“NUMANS-Roxette”も最初に4曲ぐらい作った時のストックだったんで、まだネタが豊富だったというか。最初だから何でもできるじゃないですか。じゃあもう、こうしちゃおう、って」

――すごくロマンティックで、スウィートな曲になりましたよね。

「メロディーが、ってことですよね」

――メロディーも、でしょうか。ただ、歌詞は資生堂な雰囲気ではないですよね?

「全然。まさか、ですよ(笑)」

――〈ハラキリ〉とか出てきますもんね(笑)。

「はい(笑)」

――となると、歌詞は曲調に合わせて書かれるわけではないんですね?

「そうですね。すごく勢いのある曲にはそのままもう、ベタに勢いで歌詞を乗っけることもありますけど、ポップソングとかは真逆をいきたくなりますよね。XA-VATではね、俺が作るメロディーラインは一人で歌えないものが多いんです。コーラスを多用していて、そこをみんなが歌うんですけど、なかでもレコーディングの時はKoziさんがコーラス・パートを歌うことが多くて、そういう時にちょっとね、〈こんなこと言いたくねえだろうな〉みたいな歌詞を(笑)」

――ヒドイ(笑)。確かに〈浮き足ジョジョ立ち〉とか……めったに口にすることはないと思うんですけども、でも、ご自分も結構なことを歌っていらっしゃいますよ?

「ええ、そうですね。でも全体で見たらなんかオシャレ、みたいな(笑)。それぐらいのもんですけどね」

――ただ、石井さんのなかでは描いているものの具体的なイメージはある?

「うーーーーん、そうですね。それもすっげえモノによるんで、例えば個人的にですけどね、一部分だけものすごく意味がわかるというか、意味を持たせてしまったから、それが消えるように他のところはごっちゃごちゃにしてやろうとか。あとは、全然わかんないと思うけど、何かの曲とちょっと繋がってたり、わざとおんなじ言葉使ってたりするようなものとか」

――そういうことをこのアルバムでもやっている?

「その手法を変えるつもりはないっていうか、それが自分のやり方なんで、みたいなところですね。歌詞は自分にとっては重要だけど、自分以外の人にとっては要らないものでいいです、って感覚なんですよ。だから歌詞を見てほしいとも思わないし、歌詞カードって一応あるから表記しますけど、強烈に読みづらい感じに……例えば1曲目から10曲目までが全部繋がってるとか、そんな感じで今回のやつも載ってるんで、たいしたものとして捉えないでください、ってことです」

――先程のジャケットの話からすると、デザイン的な意味で字面を考えたりすることはあります?

「ああ、そうですね。歌詞もデザインなんですよ、ホントに。デザインのいちばん最後の段階ですね。それ以上でも以下でもない」

――今回はアート・ディレクションも石井さんが担当されてるんですか?

「弟がデザインをやってるんですね。だから自分でラフを作ったり、イメージを言葉で伝えたりはしますけど、あとはやっといてね、みたいな(笑)。打ち込みの音楽で、録りも、楽曲の構築も全部自分でやるんだけども、ミックスとかトラックダウンって自分でやりたくないんですよ。それに似てる(笑)。そのへんから他の人の血を入れないとわけわかんなくなるんで」

――そこまでやりたい方かと思ってました。

「〈オレオレ〉っぽい感じって、すごい嫌いなんです。だからそういう人じゃないんですよ、全然(笑)。勝手なこと言って、勝手なことやって、最後は投げ出したいってところがどこかにあるんですよね」

――だから、歌詞も自由に解釈してください、という?

「うん、解釈してくださいっていうか、解釈しなくていいです、みたいな」

 

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掲載: 2011年03月16日 18:01

更新: 2011年03月18日 13:53

インタヴュー・文/土田真弓