インタビュー

LONG REVIEW――XA-VAT 『艶℃』

 

XA-VAT_J

突然だが、先日、カジヒデキとリディムサウンターのライヴを観に行った。

両者の個性がポップに弾ける〈新解釈のネオ・アコースティック〉が詰め込まれた初作『TEENS FILM』にはそれぞれのディグの歴史が刻み込まれていて、彼らの音楽に触れるたびに思い出すのは、私自身が80~90年代に手に入れたネオアコ~ギター・ポップ系のあれこれのレーベル作品だったりする(詳細はこちらのレヴューを)。そんなわけで、その日の終演後も聴きたくなったアルバムがいくつかあって、CD棚を捜索していた……のだが、その最中にはたと気付いた。よく考えたらこの現象、最近もあったな、と。

そう言えば、12月2日に行われたXA-VATの恵比寿LIQUIDROOM公演のあとも、私は同じことをしていた。そのときに聴いたのはマイケル・ジャクソンとTM NETWORKの諸作だったのだけど。

で、私は一体何を言いたいのかというと、XA-VATのファースト・アルバム『艶℃』からもメンバー4人のディグの歴史がはっきりと感じられる、ということだ。インタヴューのなかで石井が発言しているアーティストを除けば、デヴィッド・ボウイやデッド・オア・アライヴ、デペッシュ・モード、キャバレー・ヴォルテール、小室哲哉……などを具体的に想起したりしたが、本作において彼らは、70年代後半~90年代頃のニューウェイヴからUSのビルボード/J-Popチャートまでを同じ俎上に乗せ、独自の解釈を加えることで、2011年型のポップ・ミュージックを提示している。

加えて彼らのおもしろいところは、前衛的なファッションやアートワーク、また今回の作品で言えば初回限定のCD+CD盤に付属のリミキサー陣のセレクションまでにバンドの意志を配している点である。過剰さが艶やかさと艶めかしさを生み、グラマラスでジェンダーレスな空気を漂わせ、多くのカルチャーとリンクする入り口の扉を開け――ひいてはポピュラリティーへと繋がっている。

アクセス方法はいくらでも用意されている。突出することで新たなエンターテイメント性を獲得した、ポップ・アルバムの登場だ。

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年03月16日 18:01

更新: 2011年03月18日 13:53

76423