INTERVIEW(4)――プリンスの“Batdance”が入ってきた
プリンスの“Batdance”が入ってきた
――(笑)お話いただいて、ありがとうございます。そう言えば、“VAT-DANCE”はPVも作ってますよね。この曲はリード曲ですか?
「いや、どれが特別というのはないんですけども、どんな曲調のものがアルバムの入り口としておもしろいか考えて。あとは映像になりやすい曲となりにくい曲と、やっぱりありますよね。そういう部分で、まあ“VAT-DANCE”って俺の曲なんですけど、他のバンドだったりミュージシャンだったりがやってない感じかなって気がしたんですよね。いわゆるエレクトロとか、そういう音楽がありますけど、そういうんじゃねえし、全然。いま、ない感じですよね。昔の……」
――ああ、はい。解体してみると特にそうですね。何かイメージしていたものがあったんですか?
「最初はね、もっとジャネット・ジャクソンの“Rhythm Nation”みたいな曲だったんです。音飾もわりかしあんな感じで、ああいうふうに作ってたんです。でもどこかでね、このタイトルの通りなんですけど、プリンスの“Batdance”が入ってきちゃったんですよね。これだな、と思って。だからシンセのフレーズとかでモチーフにしてる部分もあって、それはパクリっちゃあパクリなんだけども(笑)、わざとやっていることで。何ていうか、いわゆるテクノとかから派生する現代のエレクトリック・ミュージックとは違う、まだ手が付けられてないようなところ? 例えばいま〈エレクトロ〉って言った時に、あんまりジャネット・ジャクソンとかプリンスって思い浮かべないだろうし。でも俺が思うエレクトロとか、好きなものってそこらへんだから、その現代的な解釈というか。特異な感じはあると思うんで、先に一発、出しとこうかな、って」
――ライヴで初めて聴いた時、ファンク色が濃い曲だなと思って。私が個人的に思い浮かべたのはジャネットではなくマイケル・ジャクソンだったんですけども、生のスラップ・ベースのようなベースラインが印象に残る、グルーヴ感がおもしろい曲だなあと。
「うん。でも、パッと聴いた時にわかりやすい曲だなってイメージはありますよね? ポップに聴こえるだろうし。だけど、一体どこがAメロでBメロでサビか、わからないじゃないですか。俺もわからないんですけど(笑)。いわゆるJ-Popの作りではない感じなんだけれども、別に複雑な構成とかではなく、みたいな、そんな効果を狙いたいなと思って、最初からそういうのが頭にあって作った曲なんですよね。はっきりしたサビがあるわけじゃないのにすげえポップに聴こえる、そういう曲ってあんまり、ね? ジャパニーズな感じではないのかなと思って」
――その一方で、アルバムのタイトルが含まれているラストの“THE 艶℃ BABY”は背徳的なムードが漂う曲ですよね。
「うんうん、1曲だけそういう感じですよね。でもそれが1曲あるのとないのとではだいぶ全体のイメージが違うなって。今回のアルバムは突っ走っちゃう感じの、ムードがない感じの曲が多いですから、この“THE 艶℃ BABY”みたいな曲が1曲ほしいね、って話をしてたんですね。で、各々作るじゃないですか。俺もこんな感じのを作ってたんだけど、そしたら最後に3曲ぐらい似たような方向性の曲が出ちゃって(笑)。まあ、俺のはまだみんなに聴かせる前だったからボツでいいや、と思って、急遽それとは別にもう1曲“INVASION-NOVATION”を強引に作ったんですよ。“THE 艶℃ BABY”とは逆のド・ポップなやつを入れようって勝手に思って、方向性を変えて作り上げて、それで全体としてまとまったかな、と」
――“THE 艶℃ BABY”とアルバムのタイトルでは、どちらが先にあったんですか?
「アルバムのタイトルですね」
――では、この曲のタイトルに〈艶℃〉という言葉を使ったのはなぜですか?
「元々は全然違うタイトルでSADIEさんが歌詞を書いてきてたんですけど、そこに俺が別の歌詞をちょっと乗っけて変更したんですけど……」
――例えば歌詞のなかの〈MORE SEXUAL MORE ENERGY/OLD FRESH NEW FACE IT’S A SYMBOL/TRANCE SEXUAL TRANCE ENERGY/THAT’S RIGHT ROMANTIC-TAK DIG-DAG〉という部分は、『艶℃』という言葉と同じくらいXA-VATというバンド自体に当て嵌まる一節だなと思うんですが、歌詞はタイトルをイメージする言葉が並んでいる?
「ああ~、そう言われると、そうでもないなあ。歌詞だけじゃなくて、ヴォーカルとか楽曲の雰囲気が、いちばん〈艶℃〉って言葉に合ってるかなって。タイトルに〈艶℃〉って入れたら、もっとこの曲が引き立つな、っていうところですね」
――なるほど。今回のアルバムには幅広い楽曲が揃ってますけども、ご自身で振り返ってみていかがですか?
「そんなに特別、変わったものじゃないと思いますけどね。わりとドギツイことをやってたり言ってたりはするけども、トータルで聴いたらポップスとしてもある程度通用するというか、こういう音に興味がない人でも聴けるアルバムじゃないかな。わかんないですけど。逆に感想を訊いてみたいぐらいです。どうですかね?」
――いままでのお話に出てきた音楽性がパーツとして散りばめてありますけども、やっぱり中心にあるのは歌だと思うんです。そういう意味ではおっしゃるとおり、全体をまとめて言うならポップスかなあ、と。あと、一枚通しての空気感として私がイメージしたのは、リミックス盤に参加されているアトマイザーのジョニー・スラット主催のクラブ〈NAG NAG NAG〉。それは先程お話した“THE 艶℃ BABY”の歌詞の世界観でもありますね。
「おお~、そういう感想は初めて聞きましたね」
――ただ、そんなふうに情報量は多いんだけれどもトータルで30分台、というタイム感もいいと思います。
「うん。俺、全部並べて聴いたりはしてないんですけど、サーッて聴いて、ああ終わったか、みたいな感じにはなってるんじゃないかな、って思うんです。どのバンドやっててもそうなんだけど、俺はそういうのが好きで。曲のタイムは短いのも長いのもいろいろあると思うんだけど、全体として重たくなってなければいいなと思いますね」
――そして最後にやはり気になるのは、今後のことですが。XA-VATは5月のライヴのあとはどうするんですか?
「全然考えてないですね。ここまでやったらまた考えて、ってやらないと、どんどんインパクトが薄れておもしろくないことになりそうだし、各々の活動もあるので、5月のライヴのあとに考えます。XA-VATをどういうふうに捉えるべきなのか、どういうふうに活動していくべきなのか、というところも含めて。だから、あれですよ。ちょいちょい観られるようなものでもないと思うので、5月のライヴには来たほうがいいんじゃないかな~?と、思いますね(笑)」