INTERVIEW(3)――暴走族とファッション
暴走族とファッション
――例えば、他の楽器パートと同じように、音の一つのような感覚なんでしょうか?
「そうですね。曲のなかで、〈このシンセがどうだ〉って言う人はいないじゃないですか。だけど言葉は特別なものとして捉えられますよね? パートで言えば、ドラムがあって、ベースがあって、バック・トラックがあるのに、みんな、歌だけを別のものとして捉えるじゃないですか。そうじゃないってことですね。歌もトラックのなかの一つだし、歌詞もそういうものです。音飾みたいな、そういうことなんですね」
――なるほど。
「あとはまあ、そんなにツッコまれたくないっていうのもあるかもわからないですけど。実際は、歌詞を作ってる時に〈おーし、いいのキタ!〉って自分では思ってるんですよ(笑)? だけど別にね、それをアピールしたくないっていうか」
――そこはアピールしたほうがいいんじゃないですか?
「恥ずかしいじゃないですか(笑)」
――(笑)歌詞について語るのは?
「うん……今日は歌詞を話す感じなんですか?」
――歌詞だけにフォーカス、ということではないんですが、話してみますか?
「いいですよ。何でも」
――では先程話に出たので、石井さん的に〈いいのキタ!〉と思った歌詞は、どの曲のどこですか?
「うーーーーーーーん…………(笑)」
――日本語、英語、ドイツ語、あとイタリア語? 言語も多種多様ですが。
「ああ、ドイツ語って“E-Z”ですよね? 無茶苦茶なドイツ語で〈This is a pen.〉みたいなこと言ってるだけですけどね(笑)」
――〈キャベツ〉とか言ってません?
「言ってますね(笑)。これはもうホントに、ゴミみたいな歌詞にしてやろうってことですよね。ボールペンとか、キャベツとかね。だけど〈Rozenkohl(=ドイツ語でキャベツ)〉って、めっちゃ格好良いじゃねえかよ、っていう(笑)。この曲、最初はこういう感じの曲じゃなかったんですよね。ボディー・ビートみたいな、どっちかっていうとDAFとかそういう感じの、シンプルな4つ打ちビートにぶっ太いベースが鳴ってるっていう感じの曲だったんです。だからまあ……〈(非常に良い発音で)いっひ! りーべ! でぃっひ!〉って言っとくか、みたいな(笑)。あとはレコーディングの時に〈もっとおもしろいアプローチないかな?〉って言って、スラッシュみたいなギターのリフを入れて。良かった頃のミニストリーみたいなイメージになったら、ライヴでやったのと全然違うからおもしろいかなーって。で、やってみたらハマったんで、結果そういう感じになったんですよね」
――いかつい語感が合ってますよね(笑)。12月2日のライヴの時、セットリストを見て私がとっさに思い出したのは……たぶん石井さんはその周辺がお好きだと思うんですけど、80年代のTVの音楽番組で〈eZ〉ってあるじゃないですか。
「ありましたね(笑)」
――岡村靖幸さんのリミックスとか、そういう絡みもあったので、80年代のエピックとかソニーとか、その周辺を思い出したりしてたんですけど……。
「全然違うっていうね(笑)。歌詞のイメージのなかには……まあその、いろんな意味があるというか」
――EGレーベルとか?
「それもありますしね。〈Attack、Decay、Sustain、ReleaseのEnvelope Generator〉ですよ、これ。EGっつったらね(笑)」
――えーと……シンセの……用語、とかですかね……?
「そう! そうです」
――そういうのが、こう……ごちゃっと。
「そうですね(笑)。こういうものばっかりだから俺、たまに頭がイカれてる人っぽい感じに思われたりするんですよね。少しケミカルな方向というか。まったくそういうのではないんですよ? いたって健全なんですけど」
――わかってます(笑)。こういった言葉の羅列はわりとスラスラと出てくるんですか?
「それがね、ものすごく一生懸命です(笑)。〈ああ、どうしたらいいんだよ~〉って。こんな短い歌詞にどれだけ時間かかるんだよ、って話ですよ」
――(笑)……それで話は戻りますけど、〈いいのキタ!〉って思った歌詞はどれですか?
「そうですねえ……“BLACK RUNWAY OF DEVILS”はタイトルからキテると思うんですよね。これはわかる人にはわかるっていうかね、あんまり言わないですけど教えてあげますとね、〈湘南爆走族〉って知ってますか? 漫画」
――読んではいないですが、知ってます。
「〈湘南爆走族〉のことをですね、〈PURPLE HIGHWAY OF ANGELS〉っていうんですよ。その漫画のなかでね……(突然吹き出す)というか俺、なんでこんな話……」
――(笑)われに返らず続けてください。
「〈湘爆〉のね、江口洋介ですよ。江口洋介が外人に〈PURPLE HIGHWAY OF ANGELS〉って言うんですよ。それに対してね、〈BLACK RUNWAY OF DEVILS〉みたいな(笑)。要するに暴走族のチームの名前ですけども、〈HIGHWAY〉が〈RUNWAY〉になってるところがめっちゃオシャレじゃないですか(笑)」
――ファッションショー的な。
「そうですよ。あと、歌詞にも〈poison〉って書いてありますけど、これは〈ポワゾン〉ですからね。永ちゃんですよ、これは。ディオールの香水でポワゾンってあるじゃないですか……まあ、このへんでいいですかね?」
――もう少し……。
「あとは〈ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー〉っていう暴走族のやつありますよね? すごくこう……遠いものというかね、暴走族とかヤンキーみたいなものと、ファッションみたいな。言葉で説明すると難しいんですけど……もういいですか(笑)?」
――(笑)いまのお話ですと、一つのアイデアから膨らませていくような雰囲気ですね。
「そういうものもありますし、なんでもない単語から始まってくようなものもありますね。(“VAT-DANCE”の歌詞を指して)この〈make it up baby〉とかもね、キテますよ。要は内田裕也ですからね(笑)。〈シェケナベイベー〉を変換できないかっていうところから始まって、これになったわけですから。あれは〈shake it up baby〉なわけでしょ? 内田裕也が〈シェケナベイベー〉なら、じゃあ俺は〈メケナベイベー〉だな、って。それでもう、自分は大満足するわけですよ(笑)。そのあとに、さて他の部分はどうしようか、ってなるんですけどね(笑)。だけどこれ、言ったらおもしろくないんですよ。自分のなかだけにあるから楽しいんですけどね」