インタビュー

L.E.D. 『elementum』

 

L.E.D._特集カバー

 

[ interview ]

さまざまなバンドで活躍する7人の腕利きミュージシャンによって結成されたインスト・バンド、L.E.D.。あらゆるジャンルの音楽をクロスオーヴァーしたバンド・サウンドと、緻密なスタジオワークから生み出されるその音は、壮大な風景を描き出しながら歌モノにも負けない叙情性を感じさせてくれる。そんな彼らの最新作『elementum』では、クラムボンの原田郁子をゲストに迎えて初のヴォーカル・ナンバーを披露。また、これまでのアートワークを手掛けるなど、バンドと親交が深いマンガ家/映像作家のタナカカツキがPV制作を担当しているのも話題だ。そうしたコラボレーションから刺激を受けることでよりスケールアップした新作について、佐藤元彦(ベース)、オータコージ(ドラムス)、横山裕章(キーボード)の3人に話を訊いた。

 

 

リラックスした空気感

 

――今回のレコーディングはどんな感じだったんですか?

佐藤「まず、それぞれ曲を書いた人が自宅でデモとして8割方まとめて、それをメンバー全員に聴かせてレコーディングに入る、というのは前回と同じなんですけど、今回は合宿したんですよ。長野に一週間。普通にバンド・レコーディングみたいな感じにしようってことになって。でも結局、みんな忙しくて全員は集まれなかったんですけどね(笑)」

オータ「最初は7人全員で、一週間みっちりとレコーディングする予定だったんですけど、始まったらみんな好き勝手に仕事を入れはじめちゃって……(笑)。でも、リズム隊はいないと曲が成り立たないので、この二人(佐藤とオータ)は常駐して、あとのメンバーは入れ替わり立ち替わりで、ほとんど〈徹子の部屋〉状態でした(笑)」

――でも合宿することで、どんな時間でもレコーディングできるという環境はアルバムに反映されました?

佐藤「それはすごくありましたね。やっぱり合宿で良かったのは、総じてみんなリラックスしてるんですよ。だから煮詰まることは今回はなくて。そこはすごくうまく回りました。〈徹子の部屋〉にしてることで空気の入れ替わりが常にあって、いつも新鮮な感じだったんですよ(笑)」

オータ「このバンド、ギュ~ッとなったら、多分、解散しちゃうもんね(笑)。それに前作では街の公民館みたいなところを借りて、そこに機材を持ち込んでレコーディングしたんです。だから部屋鳴りも風呂場みたいなリヴァーブだったし、録り音も線が細くてミックス時の音作りに苦労したんですよ。今回はちゃんとしたスタジオ環境エンジニアさんと初めて普通のレコーディングができたのも大きかった」

 

L.E.D._A2

 

――合宿中に曲を作ったりもしたんですか?

佐藤「そういうのもありますね。いちばん記憶に残ってるのは“bluemoon in Togakushi”で、それは合宿中に全パートを録り終えたんですよ。合宿に入る前までは、デモとしてそんなにガッチリしたものは出来てなかったんです。でも、合宿でみんながリラックスした空気のときにレコーディングしたら、グルーヴもそれぞれのフレーズも空気感もすごくいい塩梅にハマりました」

オータ「その前に戸隠神社に息抜きに行ったんですよ。車で10分くらいなんですけど、陽が暮れるまで結構歩いたんですよね。そしたら、何か儀式みたいなのをやっていて、それをフィールド・レコーディングしたりして。それで戻ってからレコーディングしたんですけど、戸隠の空気感のまま、ほわ~っとやったら、良い感じでゆるいテイクに仕上がって。ドラムはほぼ一発で終わったんですよね。ちなみにその時の神社でのフィールド音、曲冒頭に入れてます」

佐藤「東京で録ったら、あのノリにはならないよね、きっと」

――そういう合宿ならではのノリで生まれた曲って、ほかにもあるんですか?

オータ「結構、ありますね。例えば“nathan road”とか。この人(横山)の曲なんですけど、メチャクチャなこと言うんですよ。ドラムの音を録る時に〈ティッシュの感じがいい〉って言い出して、ティッシュを何箱も使って、羽毛みたいにティッシュでドラムを埋めたんです。そうすることで、リズムがちょっとヨレたりするんですけど、それがいいらしくて」

横山「そのヨレヨレ感が良かったんですよ。アンダーグラウンド・ヒップホップみたいで」

オータ「そういう悪ノリって合宿ならではというか、旅行のトランス感みたいなものがあったと思いますね。怒る人いないし(笑)」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年04月06日 17:59

更新: 2011年04月06日 18:23

インタヴュー・文/村尾泰郎