インタビュー

INTERVIEW(3)――壮大なものにグッとくる感覚

 

壮大なものにグッとくる感覚

 

L.E.D._A4

 

――いま、曲のイメージをメンバーで共有していたという話がありましたが、そういうのはほかの曲でもあるんですか?

横山「そうですね。“I'll”ほどはやってないですけど、漠然と〈海〉とか〈水〉とか〈風〉とか、そういうぐらいの感じで」

――アルバム・タイトルの『elementum』というのは、〈自然の四大元素〉という意味らしいですが、曲を作る時、自然からインスパイアされたり、それをテーマにすることが多いんですか?

佐藤「インスト・バンドは言葉がないんで、具体的なイメージを音にしづらいし、具体性をイメージの落としどころにしようとははらないんです。だから自然と雄大な景色だったり、街の景色だったり、大きく俯瞰したところから見るような曲になってくるんですよね」

オータ「細かな描写って、やっぱり言葉にはかなわない。〈喫茶店で女の子が微笑んでこっちを見てる〉みたいなね。逆にインスト・バンドは、言葉にできないような壮大なものを表現するほうが合ってると思う」

佐藤「目の前に広がる圧倒的な自然みたいなものは、いくら言葉を並べてそのすごさはなかなか伝えづらいじゃないですか。インストゥルメンタルだと言葉がないぶん、逆に聴き手に映像を想起させることができて、ある意味で言葉よりも心に刺さる表現ができるんじゃないかな、っていう気はしてます」

オータ「それに、このメンバーだから、というのもあると思う。7人それぞれにほかのバンドもやってるじゃないですか。歌モノだったり、ロックだったり、ポップスだったりっていう、言葉ありきのバンドもやってるので、音楽を多面的に捉えられるというか。だからこそ、インスト・バンドならではの世界観をこのバンドでやろう、っていう方向性にいってる気がするんですよね。このメンバーだからこそ説得力もあるし。インスト・バンドって、ほかにもゴマンといると思うんですけど、メインで歌モノやロックやポップスをやってるメンバーが、あえて集まってやってるインスト・バンドって、あんまりないと思ってて。だからこそ魅せられる景色っていうのもあると思うんですよ。メンバーそれぞれの活動が、いま佐藤が言ったことに説得力を持たせてる気がするんですよね。そういうところを聴いてもらいたいというのはあります」

――確かにL.E.D.のサウンドはインストだけど〈歌〉を感じさせますね。メロディアスだし、とても叙情的で。

佐藤「そこはみんな意識してると思います。例えばタナカカツキさんと意気投合したのも、そこがキーワードになっていて。カツキさんとアートワークをいっしょに作ったり、遊んでたりしてきたなかで、〈カツキさんのどこがいちばん好きかな?〉ってよく考えたら、カツキさんの作品って情感があるんですよ。なんかこう、ノスタルジックでもあり、物悲しくもあり、でも幸せな感じもあるし、人間的というか。で、〈そこが、やっぱり好きだったんだ〉と思った反面、自分たちの出している音にも、そういったところが結構あるっていうのに気付いて、より強く意識するようになったんです。〈これはオレらの良いところだ〉って。そういったところは、前作以上に今回のアルバムでは意識していると思いますね」

オータ「オレたち、グッとくるものが好きで。グッとくる感情っていうのは、ミニマムなところでくるものじゃないですか。ほんとに些細な感情だったりとか、ちょっとのことで思う爆発的な感情みたいな。良くも悪くも、人間的なものにグッとくるところがあると思うんですよ。さっきも言ったように、インスト・バンドって壮大なものを表現するんですけど、壮大なものにグッとくる感覚ってあんまりなくて、〈すげえな〉とか、ただ唖然とすることのほうが多い。でもオレたちはグッとくるものが好きだから、デカいところからミニマムなところに集約して、最終的にグッとくる音楽にしていくというか。インスト・バンドで、そんなふうにグッとくるバンドって、オレが知る限りほとんどいないんですよ」

佐藤「そうだね。あたりまえだけど、うちらと同じことをやろうとしているインスト・バンドはいないよね。格好良いバンドはいっぱいいるけど、うちらと同じような感覚でインストを解釈してるバンドはいないと思います」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2011年04月06日 17:59

更新: 2011年04月06日 18:23

インタヴュー・文/村尾泰郎