INTERVIEW(2)――原田郁子のアーティスト・パワー
原田郁子のアーティスト・パワー
――今回、ゲストで原田郁子さんが参加されていますけど、原田さんも合宿所に来られたんですか?
オータ「来ました。レコーディング作業もガチできましたね。〈うわ、やべえ〉って思うくらい(笑)」
横山「僕は原田さんと初対面だったんです。原田さんに参加してもらう“I'll”は僕が書いた曲だったんで、原田さんといろいろ話すことになって。でも、原田さんも僕も初対面だし、良いものを作りたいから、どちらもナイーヴになっていて。原田さんにとりあえず、ほかのメンバーには席を外してもらいたいって言われまして……(笑)、僕と原田さんとエンジニアさんを入れて3人で密に話し合いました。」
佐藤「その間、ほかのメンバーは宿舎で焼きそば食べてました(笑)」
オータ「焼きそば食べながら、敵地に仲間を送り出す心境ですよ。大丈夫かな、って。大変だったでしょ?」
横山「大変というより、どうなるかわからないまま時が過ぎていって。僕のほうから〈こうやって歌ってください〉っていう感じではなくて、原田さんからのアイデアと僕のアイデアをいっしょにして、徐々に組み立てていくみたいな感じだったんです。やっぱり初対面同士って、なんかわかんないじゃないですか。それで、周りの空気を読みつつ、お互いを探りつつみたいな。なんか飲み会に知らない人がいて、初めて話すみたいな感覚ですよ(笑)」
――原田さんからはどんな意見が出てきましたか?
横山「原田さんが歌詞を書いたので、歌詞のこだわりとか〈ここはこういうふうに歌いたい〉というのを汲み取りつつ、〈じゃあ、そういうふうにやるんだったら、こういうふうにしたらどうですか?〉みたいな感じのやり取りですね。レコーディングも徐々に組み立てながらやっていったんですけど、偶然も手伝って最終的には良い形になりました」
――ミックスがすごく凝ってますよね。
佐藤「これも結局、原田さんもずっとガチで参加してくれました。〈ラフのミックスも聴かせてほしい〉って言ってきてくれたので、自分たち的には〈いいだろう〉っていうミックスが1回上がったんですよ。それを原田さんに送ったら、〈ちょっと違うな〉ってなって。で、いろいろメールでやり取りしてたんですけどうまくまとまらなくて、結局、直接会って話し合いをしたんですよ」
オータ「そこで印象的だったのが、原田さんが突き付けてきたんだよね。これはホントに自分たちが100%満足したものなのか、ってね」
佐藤「うーん、そこまでは言ってないっしょ(笑)。原田さんは曲に対する自分のイメージを明確に持っていたんですよ。レコーディングする時、原田さんと僕らは、この曲のイメージをある程度共有してたんです。それは氷河とかオーロラとか、あんまり人の気配のない冷たい空気感のある世界、その上空を飛んで、空から見てるような……とか、そんな抽象的なイメージなんですけどね。原田さんは〈そういうふうに聴こえるサウンドにするんだったら、こういうミックスにすれば?〉という具体的なアイデアを持っていて。ただ話をしてみると、原田さんがイメージする音像と自分たちがイメージするものが違っていた。そこで原田さんのイメージやアイデアも組み込みながら、改めて自分たちで再構築することで、コラボとして作品がもっと良い方向にいくのでは、と思ったんです。それでやってみたら、ホントにうまくいった。その時に思ったのは、原田さんのアーティスト・パワーですね。ただ感覚で物を言ってるんじゃなくて、ロジックと感覚のバランスがすごい。これまで現場をごいっしょさせてもらったアーティストのなかで、そこがいちばん印象的でした」
――ただ歌ってもらったというだけじゃなくて、いっしょに曲を作ったみたいな感じですね。
佐藤「そうですね、サウンドの音像も含めて、トータルでいっしょにコラボした感覚ですね。すごく、うまくいったと思います」
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