LONG REVIEW――kowloon 『metallic, exotic』
実に4年ぶりの新作『metallic, exotic』。前作『Infection』と比べると、シンセやギターを幅広く採り入れて音のレイヤーが厚くなり、高密度なアンサンブルを展開しているが、シンコペーションを多用したドラム・ブレイクとベース、鍵盤のコンビネーションからグルーヴを生み出す彼らの身上は不変である。
冒頭の“telepathy”は、ほぼワンノートの歪んだベースと、ソリッドなブレイクビーツで幕を開ける。すぐにピアノのリフが合流するが、それもビートが強調されたもので、どの演奏もメロディーを抑えた打楽器的なアプローチ。これだけだと〈ストイックでシリアスなインスト・ロック〉という印象かもしれないが、そこに即興性の高いフルートが加わり、独特の色彩感覚が表れる。
かように彼らのサウンドには、いつも独自のアイデアが詰め込まれている。表題曲ではフュージョン的なエレクトリック・ピアノがメタリックなギターと並走するし、“last tribe”ではZAZEN BOYSの剛腕ベーシスト、吉田一郎を迎えてファンキーなセッションを繰り広げている。
彼らの演奏はミニマルなフレーズを繰り返し、徐々にその熱を高めていくように見えるが、そのフレーズは決して単一ではなく、曲が進むにつれて少しずつ変化していく。そして起承転結の枠に囚われない予想不可能な展開によって、スリリングな物語性をも獲得しているのだ。それはドラマティックな構成で聴き手を引き込む“tones of nowhere”に顕著である。
他にも、シンセによるサイケなシーケンスが全体を覆うなかでベースが生々しく蠢く“Harajuku”や、ほぼワンコードながら複雑なリズム・パターンの組み合わせがプログレッシヴな“jetblack”、甘美なエレクトリック・ピアノの揺らめきに、どこかわびさびすら感じる“new innocence”など、多彩なサウンドとアイデアが凝縮されており、バンドが心身共に充実していることを窺わせる。