cali≠gari『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』
[ interview ]
今夏に発表されたシングル『# 娑婆乱打編』『# 東京、43時00分59秒編』のリリース時には「次作はアルバム」と公言していたcali≠gariより、一転して到着したのはふたたび2形態のシングル『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』。通常通りに石井秀仁(ヴォーカル)と桜井青(ギター)のリーダー作となる“暗中浪漫”“初恋中毒〜BL編〜”の2曲に加え、表題をテーマとした2種類のラジオドラマが用意された今作は、彼らの人を食ったようなエンターテイメント性が露になった仕上がりとなった。
音楽業界の現役スタッフから同じ密室系のヴィジュアル系バンド、LA'ROYQUE DE ZAVYのドラマーであるスコーピオンの毒無し(二代目)までをゲストに迎え、パロディーまみれのシチュエーションのなかでシニカルな討論が繰り広げられる本作は、さながらcali≠gari流の〈スネークマンショー〉とも言えるのでは? そんな2ヴァージョンの新作について、今回は桜井青(ギター)と石井秀仁(ヴォーカル)、それぞれに訊いた。
INTERVIEW with 桜井青(1)――アクがないゆえにおもしろい
――今回シングル『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』がリリースされるということなんですけど、もともとアルバムだったはずでは……。
「そんなことはビクターに訊いてくださいよ」
――前作のときに石井さんにお話を伺ったときは、曲が上がらないとかだったような……いまはいかがですか?
「まだ出来てないですね(キッパリ)。だから今回シングルをもう1枚出さなきゃならなかったのは、レコード会社による政治的な理由がいちばんデカいと思いますね(スタッフ苦笑)」
――ただ、石井さんが書かれた“暗中浪漫”はジュエリー・ブランドのCMタイアップ曲となってますが。
「そうですね。政治的な理由で、初のCMタイアップがつきましたね」
――“暗中浪漫”は、タイアップありきで制作された曲なんですか?
「それは石井さんに訊いてくれたほうがいいと思うんですけど、そうじゃないんですね。アルバムの5曲目か6曲目に入れようとして作っていた曲らしいんですけど……僕、“暗中浪漫”気に入ってるんですよ。アクがないんですよね。アクがないゆえに、おもしろいなと思って。ウチでこんなにシンプルなものっていうのはなかなかないなって思ったんですよ。構成的に凝ったこともしてないし、まあ曲的にはやっぱりね、石井メロ炸裂のキャッチーな感じなんですけど、かと言ってアクはないですよね。上質なポップソングだと思いますよ、やっぱり」
――この曲、私個人としては、どこか懐かしいテイストが感じられるんですよね。
「あ、それはあると思いますよ。この曲初めて聴いてギターを組み立ててるときも、〈いまこれやんないよねー〉っていうのをやってって。ギターを組み立ててるときって、大体エンジニアの人がいて、僕がいて、石井さんがいるんですよ。で、僕が何パターンか弾いて、Aメロはこれ、Bメロはこれ、サビはこれって組み合わせていって、石井さんに〈これはどう? どっちがいい?〉って。僕、ギター弾くときには自分を作曲者の道具としてしか考えてないんで、石井さんの要求するものを自分の引き出しから何パターンか出していって、それで組み立てて、出来上がったものをじゃあさらにブラッシュアップしていきましょ、って録音していくんですよ。そのなかで、今回のギターのプレイっていうのは、90年代入ってからよく聴いてた〈いま出さない、この音〉っていうのを出してたんですよ。イントロの〈ジャラララ~、ララララ~♪〉って、いま、あんなんないですよ(笑)。あれは原音に、ピッチシフターで1オクターヴ上、プラス、オクターヴァーで1オクターヴ下を薄くかけてるんですけど……PERSONZの本田毅さんがよく出していらっしゃった音ですよね」
――PERSONZ、いいですよね。
「愛しています。cali≠gariのツアーがなければ、こないだLOFTであった『POWER-PASSION』(87年)とかインディーズの曲しかやらなかったライヴ、超行きたかったです」
――そこは一般のリスナーと同じですね(笑)。
「だって、言っちゃえば僕も現役のバンギャ(註:バンギャル=ヴィジュアル系バンドのファンの呼称の略)ですからね。バンギャが自分で聴きたい音楽を作ってるんですもん。いちばん音楽に正直ですよ。そのへんはたぶん、石井さんと考え方が違うんでしょうけどね。あの人は作っちゃったら、自分の作ったものへの興味がなくなる人だから。あの人、制作過程に関心があるだけで、完成品にはきっと興味がないんですよ。そういう感じがすごくある。だから誰よりも制作過程に厳しいんだと思いますよ、好きだから」