インタビュー

INTERVIEW with 桜井青(3)――〈パクる〉じゃなくて〈パロる〉



〈パクる〉じゃなくて〈パロる〉



――おもしろい悪意って……(笑)、ただ、最近の青さんの曲は『≠』のラストの“クロニック ダンス”や前回のシングルの“東京、43時00分59秒”とかのアーバン路線が続いていたので。


「ああ~、なるほどなるほど」


――なので、今回こういう曲がきたというのが新鮮で。


「アーバン路線っていうか、ネタで作ってるようなものじゃないですか、ああいうのって。“東京、43時00分59秒”に関しては、自分的にはオフコースとかのホントに秀逸なアーバンな歌詞を見て、〈ああ、こういう書き方をするんだ〉って学びながら書いてったんですよね。だからあれは自分的にはよくできてるんですけど、その前のアーバンみたいなのは、良く言えば実験、悪く言えばネタですから、完全に」


――“クロニック ダンス”であれば、〈口唇にミステリー〉とか、キーワード押しみたいな。


「横溝(正史)の〈女王蜂〉ですね(笑)。だけれど、難しいですよね、アーバンな歌詞って、正直」


――ギリギリのラインというのが。


「うん。こっ恥ずかしくって、変な名義(Blue=Blossom)で書いたんですけど、本当の気持ちは書きたいんですよ。書きたいというか、書けるようになりたいんですよ。刀根麻理子さんの“デリンジャー”とか、杏里の“CAT’S EYE”にしてもそうだし、あと昔のPHY・Sにしても、すごいアーバンな歌詞ですよね、やっぱり。だから、あの当時に10代、20代の人じゃないとわかんないキーワードが多すぎるんですよ。〈都会はきらめく passion fruit〉っていま書いてみてくださいよ……これ、ヤバくないですか?」


――(笑)まあ、メトロポリタンな雰囲気はしますよね。


「カッコ良いですよね。〈都会はきらめく passion fruit/ウインクしてる every night〉ですよ。日本語、英語、日本語、英語っていう文法、当時ってああいう書き方がすごく多かったと思うんですね。アーバンって言ったらヘンだけど、80sの歌詞の書き方ってそうで……もしくはまあ、森雪之丞さんや小室みつ子さんのような書き方とか。あれは盗みたいですよね。学んで、書けるようになりたいけど、cali≠gariでそれをやった場合、ぶっちゃけちょっと茶番にしかならないんじゃないかっていうところが怖いんですよね。1回テスト・パターンで書いたのが“月光ドライブ”(2009年作『10』収録)なんですが、ヒヤヒヤしましたもん」


――〈月光ドライブ/加速してオーバーテイク〉ですね。


「すごく恥ずかしい(笑)! 好きなんですけど、恥ずかしいんですよ。そこを割り切って書かないと、きっと80sなものって書けないなと思って」


――そこは職業作詞家のような感覚が必要なんでしょうか。


「必要でしょうね。だけど、いま、この歌詞を石井秀仁に歌わせていいのか!?みたいなところはすごく感じるんですよ。石井さんの歌詞って独特ですよね。なんて言うか、完全に先にイッちゃってるっていう。メンバーだって、まったく意味わからないですからね。石井さんもまあ、80sが好きな人だけれど、80sの歌詞をあの人が歌うのは結構僕は心苦しいんですよ。石井さんが〈都会はきらめく passion fruit〉って、なかなか、ね(笑)」


――まあ、cali≠gariで〈都会はきらめく passion fruit〉はないと思いますけども(笑)。


「でしょ(笑)? でも結構“クロニック ダンス”もきてるじゃないですか。〈抱きしめた刹那の欠片〉ですよ? ……〈レッツダンス〉ですよ(笑)? けっこうヤバいですよ、あれ」


――まあ、そう言われると、そうですね(笑)。


「“クロニック ダンス”がライヴでできない理由はそこなんですよ。〈歌わせられない、これ〉と思って。〈やらなくていいんですか?〉って石井さんは言ってるんですけど、〈もうちょっと僕のなかで、折り合いがつくまで待って〉って(笑)」


――作った人の折り合いがつかないんですか(笑)?


「いまね、次のアルバムの歌詞を書いてるんだけど、果たしてそれをやっていいのかどうかっていうところがものすごく難しいんですよね。だから、歌詞はすごく試行錯誤しますよ、ホントに。“初恋中毒”だって、わりかし自分のなかで試行錯誤してるものなので。いままでのものプラス、ちょっとベタな、こう、ストレートな感じのものとか、こっ恥ずかしいけどちょっと言葉にしてみようってところもあるし」


――では、“初恋中毒”は最初から青さんが歌うことを前提に……。


「してないです。石井さんが歌う、っていう話もあったんだけど、納期的な関係で石井さんじゃなくて僕が歌うってことになったから、急遽歌詞の書き方を変えてるんですよ。最初は〈恋愛偏差値〉とか書いてなかったです」


――〈大人の階段下りる!〉もキラー・フレーズですよね。ネタがわかるだけに笑ってしまう(笑)。


「うん、そうですね。音楽を広く知ってる人、歌詞とかいろんなことを知ってる人ならば、僕の曲はちょっとクスッて笑ってくれる人が多いと思うんですよね。本だったり、曲もそうだけど、僕、パロるのが好きなんですよ、いろんなものを。僕の場合ね、〈パクる〉じゃなくて〈パロる〉なんです。もちろん〈愛あってのパロる〉ですけど。僕と同い年ぐらいの人だったら、よりそういうのわかってくれるんじゃないかな、って思うんですよね。ああ25年前ぐらいはこういうこと考えてたよね、大人になるってこういうことか、って」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年11月16日 18:00

更新: 2011年11月16日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓