インタビュー

cali≠gari 『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』





音楽が基本にあるのは当然として、そもそもパッケージの隅々までも手を抜かないcali≠gariである。そのため、彼らにインタヴューしたり、原稿を書いたりする際にはアドヴァンス音源を聴く以外の準備が必要になる場合が多々あるのだが、今回の取材の前に行ったのは、復活以降にリリースされた作品群の帯を読むことだった。それがなぜかは各自確認していただくとして、予告されていたニュー・アルバムの代わりにこのたび到着したのは、2形態シングル『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』である。

ナビゲーターである外山健二が間延びした小林克也のようなキャラ設定になっているのは意図したものなのかわからないが、今作はcali≠gari流の〈スネークマンショー〉とも言えるシニカルなラジオドラマ仕様。合間にCMと新曲を挿入した全9トラック、カップリング(討論会)違いの2パターンで、共にきっちり35分で構成されている。それぞれ独立した作りだが、もし2作品共に聴く機会があるのなら、『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編_』『#_2 今、再結成ブームを考える 編』の順で聴くことをお薦めしたい。オチがより明確なので。

また、肝心の新曲は、常のごとく石井秀仁と桜井青のクレジット曲が1曲ずつ。石井が手掛けた“暗中浪漫”は、80s風味のシンセ+90s調の日本の歌謡ロックをブレンドした、スタイリッシュなポップ・チューンだ。〈銀座ジュエリー・マキ〉のCMソングとして放映中だが、その映像を観て思い出したのが、80sのCMに着想を得たアルバム『乱反射ガール』のリリース時に行った取材で、土岐麻子が語っていた言葉だ。

「当時の歌謡曲やシティー・ポップと言われる音楽にしても、詞が直接的ではなかったりする。〈スニーカーぶる~す〉とか、キャッチーな言葉を使ってすごくポップなことを言ってみたりしていて、それがいったい何なのかがわからなくても、みんなそれをおもしろがってイメージして聴いてた」。

サウンドはまったく異なるが、こと“暗中浪漫”におけるポップ感覚と『乱反射ガール』で土岐がめざしたムードには、通じるところがあるのかな、と。バブル期のメトロポリタンな空気をいまも継承するジュエリー・ブランドのCMと見事にハマっている理由も、そこにあるような気がする。

そして桜井による“初恋中毒~BL編~”は、疾走感溢れるギター・サウンドと絶妙に力の抜けたコーラスを伴って初恋の甘酸っぱさを力一杯に歌ったラヴソング。〈恋愛偏差値/26!〉〈アイはユーにラヴしたんです。〉などの一度聴いたら忘れられないキラー・フレーズに加え、神話の引用や漢字の当て字使いなど、ある意味ベタなネタが満載の詞世界は、一言で言うならば〈チャーミング〉という表現がピッタリなのではないかと。

結果的にコンセプチュアルな仕上がりとなった今回のシングル。随所に散りばめられた仕掛けのなかで筆者がもっとも気になっているのは、ラジオ番組のエンディングで流れるBGMだったりする。これが今後発表される楽曲のデモ・ヴァージョンであればおもしろいと思うのだけど、どうでしょうか。



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年11月16日 18:00

更新: 2011年11月16日 18:00

文/土田真弓