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第20回 ─ 栄光のアトランティック(その1)

ESSENTIALS これが歴史を作った名盤だ!! その1

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/03/01   18:00
更新
2007/03/01   18:04
ソース
『bounce』 284号(2007/2/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

RAY CHARLES 『Ray Charles』 Atlantic/ワーナー(1957)
アトランティック初期(53~56年)の代表曲を集めたベスト盤的な内容のファースト・アルバム。ブルース調の曲も多いが、当初没個性だったレイにアーメットが提言したことで生まれた“Mess Around”を筆頭に、南部録音による斬新なリズムの“I Got A Woman”、そして“Hallelujah I Love Her So”と、レイが徐々にオリジナリティーを掴んでいく様子がよくわかる一枚だ。ディープでハードな当時の最先端リズム&ブルース。必聴。
(林)


CLYDE 『McPHATTER Deep Sea Ball : The Best Of Clyde McPhatter』 Sequel 
故JBも影響を受けたとされるドミノズの一員にしてドリフターズの結成メンバーでもあったクライド・マクファーター。このベストには、ソロとしてもっとも充実していた50年代中~後期のアトランティック音源をパッケージ。アーメット&ウェクスラーのバックアップを受け、甘く透き通ったテナー・ヴォイスを朗々と響かせる清涼R&B曲の数々は、革新とは別のムーディーな魅力でいっぱいだ。
(林)

LAVERN BAKER 『Soul on Fire : The Best of LaVern Baker』 Sequel 
ルース・ブラウンと並ぶ初期アトランティックのレディー・ソウル。シカゴ出身で、ビッグバンドのシンガーを経てソロになった彼女の魅力は、スロウ・ブルースからジャンプ曲までを堂々と歌いきる、骨太でいて伸びやかなその歌いっぷりにある。“Tweedlee Dee”をはじめ、50~60年代のヒットを収めたこのベスト盤で、ロックンロールにも影響を与えた彼女の力強いパフォーマンスを浴びてほしい。
(林)

THE COASTERS 『The Very Best Of The Coasters』 Rhino 
リーバー&ストーラーのスパンクがアトランティックに買収される際にアトコ入りしたのが、ロビンズを前身とするLA出身のコースターズ。ノヴェルティー・タッチのダンス・ナンバーを得意とし、軽快なロッキン・ソウル・サウンドに乗せて勢いよく弾けるような歌を聴かせる。特にキング・カーティスがサックスを吹いた“Yakety Yak”“Charlie Brown”など、このベスト盤で聴ける50年代後半の曲はどれも痛快な出来だ。
(林)

THE DRIFTERS 『Save The Last Dance For Me』 Atlantic/ワーナー(1962)
メンバー交替を繰り返すなど、グループの変遷が実に複雑なドリフターズだが、これはベンE・キングのリード曲を含む黄金期のアルバム(55~61年録音)。ドック・ポーマスとモート・シューマンをメイン・ソングライターに起用した作品で、スパニッシュな薫り漂う表題曲が有名だろう。ベンEの後任となるルディ・ルイスも数曲を歌い、いずれもポップでソウルフルな躍動感に満ちている。
(林)

BEN E. KING 『Don't Play That Song!』 Atlantic/ワーナー(1962)
58年からドリフターズで歌い、60年には早くも独立したノースキャロライナ出身のシンガー。このソロ3作目では、ジョン・レノンが取り上げ、同名映画のテーマ曲としてもリヴァイヴァルした“Stand By Me”がやはり惹きになるだろうが、ノスタルジックなのに新鮮な同曲の印象はそのままアルバム自体の魅力でもある。ベンEとアーメットが共作した情熱的な表題曲(アレサの絶品カヴァーもあり)もお忘れなく!
(出嶌)

OTIS REDDING 『Otis Blue』 Stax/Atlantic/ワーナー(1965) 
オーティス流アップの最高峰“Respect”と狂おしい泣き節で迫るバラード“I've Been Loving You Too Long”を収録し、最高傑作とされることも多い3作目。他の曲はほとんどカヴァーで、サム・クックやドリフターズ、テンプテーションズら先達の定番から、本家ストーンズもライヴ・アレンジの参考にした“Satisfaction”まで、MG'sのタイトな演奏を従えながらオリジナル殺しな名唱が連発される。これで23歳かよ!
(出嶌)

DON COVAY 『See-Saw』 Atlantic/ワーナー(1966)
アトランティックのソウル・シンガーたちに楽曲提供もしていたドン・コヴェイ。この2作目では、前作にも収録されていたNY録音の出世曲“Mercy, Mercy”もいいが、注目すべきは〈スタックス詣で〉をしてスティーヴ・クロッパーらと吹き込んだ楽曲だろう。もとよりダンス曲を得意としていたドンが、南部ならではのソリッドな演奏をバックに、どこかユーモラスな雰囲気で表題曲などを熱唱している。
(林)