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第20回 ─ 栄光のアトランティック(その1)

ESSENTIALS これが歴史を作った名盤だ!! その2

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/03/01   18:00
更新
2007/03/01   18:04
ソース
『bounce』 284号(2007/2/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

JOE TEX 『The Very Best Of Joe Tex』 Rhino 
アトランティックの男衆による企画グループ=ソウル・クランも率いたジョー・テックス。ナッシュヴィルの名裏方であるバディ・キレンが主宰するダイアルの配給変更に伴ってアトランティック入りした彼の、これは70年代の名曲“I Gotcha”も含むベスト盤だ。60年代ディープ・ソウルのエキスを凝縮したような泥臭くファンキーな音と、サム・クックばりにエネルギッシュな歌で畳み掛ける熱血野郎ぶりが凄い。
(林)

PERCY SLEDGE 『When A Man Loves A Woman』 Atlantic/ワーナー(1966)
デビュー・シングルの表題曲が全米チャートを制したパーシー・スレッジ、一世一代のファースト・アルバム。マッスル・ショールズ製とNY録音の曲を混在させつつ、いずれも泥臭い演奏が土足で踏み込んでくる王道の南部サウンドに仕上げている。数多のカヴァーを生んだ表題曲はもちろん、ハスキーな声質と不器用な節回しはどんな曲でも味わい深い……〈声を振り絞る〉とはこういう歌のことだ!
(出嶌)

CARLA THOMAS 『Carla』 Stax/Atlantic/ワーナー(1966)
ルーファス・トーマスを父に持ち、オーティス・レディングとの共演でもお馴染みのスタックスの歌姫。これはアイザック・ヘイズ&デヴィッド・ポーター作の名曲“B-A-B-Y”を含むソロ3作目で、当然メンフィス印のバック・サウンドが付いている。ブルースやカントリー&ウェスタンの曲も取り上げ、パンチを利かせつつ切なさを秘めたカーラ節で歌い込むあたり、〈メンフィスの女王〉らしい余裕も。
(林)

SAM & DAVE 『Double Dynamite』 Stax/Atlantic/ワーナー(1967)
実はアトランティック側からスタックスに送り込まれたサム&デイヴ。爆発的な歌声を放つデュオの愛称をタイトルに冠したこの2作目では、“You Got Me Hummin'”などのジャンプ曲で畳み掛けつつ、“When Something Is Wrong With My Baby”(後にレーベルの後輩となるジョニー・ギルがカヴァー)といったバラードで泣きを誘う。サム・ムーアのダイナマイトぶりは、昨年の復活ソロ作でも健在だった。
(林)

ARTHUR CONLEY 『Sweet Soul Music』 Atlantic/ワーナー(1967)
オーティス・レディング主宰のジョーティスから登場した若駒の初アルバム。サム・クックの影響下にある歌い口は清々しいが、20歳という若さもあってかバラード群はやや薄味。ただ、それを補って余りあるほどの突進力が発揮されたアップはオールOK! オーティスやJB、ルー・ロウルズ、ピケット(みんな故人……)らの名や曲名を盛り込んだソウル讃歌の表題曲は清志郎ファンにも聴いてほしい。ジャケもいいね。
(出嶌)

DARRELL BANKS 『Darrell Banks Is Here』 Atlantic(1967)
オハイオ生まれで、デトロイトのレヴィロットにも録音を残すダレル・バンクス。その繋がりからなのか、ジョージ・クリントンがノーザン・ソウル調の“Our Love(Is In The Pocket)”を書くなど、ドン・デイヴィス制作となる本作は、実際にデトロイト・マナーのアルバムとなっている。ただダレルのディープな歌声は南部っぽくもあり、当時のアトランティックはそこに惚れ込んだのかもしれない。
(林)

THE SWEET INSPIRATIONS 『The Sweet Inspirations』 Atlantic(1967)
前回の〈予告編〉でも紹介したものだが……アレサ・フランクリンらのバック・コーラスを務めていた女性グループのデビュー盤。メンフィスなどに赴いてのこれは、南部録音を積極的に行っていた当時のアトランティックを象徴するような作品で、ウィルソン・ピケットやエディ・フロイドの名曲を黒々と情感豊かに歌い上げている。ゴスペル出身者らしくステイプル・シンガーズの曲もカヴァー。
(林)

ARCHIE BELL & THE DRELLS 『Tighten Up』 Atlantic/ワーナー(1968)
チャキチャキしたギターのカッティングも軽やかな〈リズム・ダンス〉路線の表題曲をポップ・チャートのてっぺんに叩き込んだ、ヒューストン産グループのファースト・アルバム。YMOのカヴァーでも知られる同曲を筆頭に、70年代ディスコの入口に片足を踏み込んだようなアップが際立っているが、ドゥワップを思わせるハーモニーも駆使した紳士的なバラード群も意外に聴きモノだ。
(出嶌)