LONG REVIEW――SISTER JET 『キャラメルフレーバー』
6月6日の日比谷野外音楽堂における〈SISTER JET 06/06 ALL YOU NEED IS LIVE AT 野音ワンマン〉、その前々日に新代田FEVERで行われる自主企画〈OUR WORLD〉と合わせたプロジェクト〈六月革命〉のキックオフとなるSISTER JETのニュー・シングル“キャラメルフレーバー”。表題曲は、メランコリックなエレクトリック・ギターと煌めくアコースティック・ギターが滑らかに交錯し、センシティヴな音世界を描き出すミッド・チューン。ほろ苦いメロディーを聴かせることに重点を置き、自己を律したリズム隊が歩く速度のビートを刻むラヴソングである。
音楽性で言えば、前回のシングル“MR.LONELY”とは対極に聴こえるだろう。だが、装飾を最大限に削ぎ落としたシンプルな構成や、彼らのバックボーン――ソングライター・WATARUの生活のなかで回転し続ける古いレコードや、3人が持つストリート感覚――が音と音の隙間から透けて見えるという点において、2作品は地続きのものだ。
彼らが鳴らすロックンロールとストリートとの距離感は非常に近いような気がする。それは彼らがホームとしていた福生UZUに充満する空気感にも通じるのかもしれないが、その匂いは、初期の楽曲に顕著だった爆発的な昂揚感のなかにも、スラム育ちのボクサーの孤独をエッジーに掻き鳴らした“MR.LONELY”のなかにも、たった1人に向けて書かれたかのごとくパーソナルな“キャラメルフレーバー”のなかにも間違いなく存在している。楽曲のカラーがどう染まるかは、WATARUによるナイーヴな詞/曲とエキセントリックなリズム隊を擁するバンド・サウンド――つまり、スウィートにもワイルドにも、両極に振り切れる自身の持ち味の配分次第だ。そして、1年間かけて歌モノとしての強度を高めていったという“キャラメルフレーバー”は、まさにその配分をじっくりと調合し続けた賜物と言えるし、インタヴュー中でメンバーが語る楽曲のアレンジの変遷は、彼らの音楽的な成長をそのまま体現しているのではないか、と思う。
元から手にしていた美点を聴き手にどうわかりやすく伝えるか。その命題にみずからが出した回答に沿って、よりシンプルな方向へと舵を切りつつあるSISTER JET。ライヴでは高速パンク・ナンバーや人力ブレイクビーツ曲などもすでに披露されているが、彼らの真骨頂である〈甘酸っぱいポップソング〉という側面がもっとも色濃く表出している楽曲が、この“キャラメルフレーバー”である。