INTERVIEW with 桜井青(3)――そのへんで子供を買ってきた
アイアイ
――そして折り返すといきなり……。
「テンション高く(笑)。最初に聴いた時、〈何これ?〉って思いましたからね(笑)」
――石井さんによる“アイアイ”ですが、『10』に収録されていた“混沌の猿”に続くものでしょうか。
「そうなんですよ。“混沌の猿”が出た後に、たまたま〈アイアイ〉って単語が出ちゃった事件があったんですよね。きっとそこから作ったんじゃないかなって……それは石井さんじゃないとわからないですけど、そういうのがあるんじゃないですか? 〈アイアイ〉って気に入ってたんで、あの人。最後に〈キッコッコッコ♪〉っていう音が入ってるじゃないですか。恐らくあそこから“混沌の猿”のテンポに繋がっての……だと思うんですよね。それと、メロディーのアプローチとかもちょっと変わった感じで」
――あと、リズムも。
「すっごい変わってます、これ。難しかったです。不思議なリフだなとは思いましたよ。〈ダッダー・ダ・ダーダ、ダッダー・ダ・ダーダ〉って……〈ええ~、難しい~〉って。あと、始まり方に対して後半のサビのアプローチの仕方がまるっきり違ってておもしろいんですよね」
――確かに。それで決め台詞が〈アイアイ〉ですからね。青さんのコーラスでは〈よ! エンタテインメント〉とか……。
「これね、〈青さんちょっとこれ、歌ってきてください〉って言われて〈何?〉って訊いたら〈よ! エンタテインメント〉って……なんですかこれ?って(笑)。そこから〈だいたいつまりはあのねのね!!〉(と絶叫)ですから。そこも〈大体つまりはあのねのね〉みたいな感じでやってきてください、って言われるんですよ。それでこういう感じでやったら〈それです〉って」
――そこは共通認識があるんですね(笑)。
「わけわかんないですね(笑)」
初恋中毒
――そしてテンションが上がったところで“初恋中毒”。石井さんのヴォーカル・ヴァージョンです。
「そうですね。これはもう完全に石井さんにお任せしちゃいましたね。やっぱり僕が歌うのと違って、石井さんが歌うとさらっとしてるなと思って。〈恋愛偏差値26〉じゃなくて70ぐらいありそうですよね」
――ソフトな歌い口が石井さんとしては逆に異質と言いますか。
「でも、もともとはそういうものを想定して作ってた曲なので。僕が歌うことになったから歌詞もちょっと違う方向に変えちゃっただけで、元はもうちょっとドロッとした感じの歌詞にするはずだったんですよ。だからね、あとになって石井さんが歌うってわかってればまた違う歌詞にしてましたよ。石井さんがこれ歌うのは〈はぁ……〉って感じですけど、実際聴いてみたら意外と熱くないですよね。あ、普通じゃん、って。不思議(笑)」
――他の曲と比べるとずいぶんマイルドに歌われてるなあという印象で。
「さらっと聴けますよね。あとコーラスもちゃんと直しましたから。僕ひとりでやればなんの問題もなくハモれますから(笑)。〈これ、何人でやりますか?〉って石井さんに訊いたら〈青さんひとりでやればいいんじゃないですか?〉って言われたので、ひとりで(笑)」
すべてが狂ってる ~私は子供が嫌いです 編~
――(笑)続いて“すべてが狂ってる ~私は子供が嫌いです 編~”ですが、このアイデアはどこから?
「もともと子供の声を入れたいっていうアイデアがあったんですよね。ちょうど〈ヘポタイヤ~♪〉とかが盛り上がってたので、自分のなかで(笑)」
――(笑)岡村靖幸の“だいすき”ですかね。
「子供の声っていいなって前から言ってて、ウチの昔の曲に関しても、子供の声みたいなものをピッチシフターでよく入れていたんですよね。それを、今回はホントに子供の声とか入れてえなと思って、そのへんで子供を買ってきたんですよ」
――買ってきた、って(笑)。
「知ってる子供ですけれど買ってきて(笑)。それでまあ、入れてみたらおもしろいですよね。子供たちの発想とか、声の出し方とか」
――青さん、子供はお好きなんですか?
「自我が芽生えてない頃の子供は好きですね。芽生えると言いたいことがいっぱいあるから面倒臭いじゃないですか、子供って。あとまあ、子供が使いたかったっていうのには他にも理由があって、“すべてが狂ってる”ってタイトル自体が鈴木清順の作品から持ってきてるんですよね」
――はい。
「その鈴木清順の〈すべてが狂ってる〉って作品が、要は暴走したマザコン野郎のなれの果てというか、絶望にひた走る衝撃の結末みたいなもので、それを観て、いつの時代でもこの時期の子供は駄目だな、ホント好きになれねえわ、って思ったんですよね。そういうのも含めてね、〈私は子供が嫌いです〉っていう。あとはたまたま伊武雅刀さんの“子供達を責めないで”を聴いてたので(笑)。(歌い出しの)私は子どもが嫌いです……〈私は子どもが嫌いです 編〉っておもしろいかも、みたいな」
――連想ゲーム的に。
「そうそうそう。まあね、〈子供が嫌いです〉とは言ってますけどね、子供も大人も大概の人は認められたいんですよ、みんな。人間は自己顕示欲の塊ですよ。そんな感じの曲ですね」
――この曲はアレンジもシングルとは異なりますし、全体的に録り直しされてますよね?
「そうですね。石井さんも、まさかの〈歌を歌い直す〉って言ってて。ベースだけかな? 録り直してないのは。ベースだけもともと異常に完成度が高かったし。あとは全部録り直してますね。ベースとか超秀逸ですもんね。ネタ満載で。研次郎くんの独壇場ですよね。まあでも、ちゃんと録って思ったけど、この曲はホントによく考えて作ったわ、ってちょっと自分褒めましたわ(笑)」
暗中浪漫
――(笑)そして次は“暗中浪漫”ですが、この曲も、当初の予定通りにシングルにならず、アルバムの5曲目、6曲目に入っていたら、全体がまた違う流れになっていたでしょうね。
「そうですね。試聴する時って大体1、2、3曲目だと思うんですけど、このアルバムを出すにあたっていちばん近くに出してるシングルだから、そういうのも含めて僕的にはこっちのほうを3曲目にしたかったんだけども、まあ石井さん的には何か考えがあったんでしょう」