インタビュー

INTERVIEW with 石井秀仁(2)——桜井の〈あの感じ〉



JAP ザ リパー



――ようやく結論が……(笑)。そして連作となる“JAP ザ リパー”は、石井さんから青さんに、歌詞に関してリクエストがあったそうですが。

「なんかね、全然そういう意味合いじゃなかったんだけど、自分が書いた歌詞に対して〈この部分、駄目です〉って言われることがあるんですね。それって、すごくおもしろくないわけですよ。〈なんで?〉って。あの人は、あそこのレコード会社はいいのに、なんでここ(ビクター)は駄目なの?とか。小説だったらこれ言ってんじゃん、映画なら普通に頭が吹っ飛ぶシーンとかいっぱいあるじゃん、みたいな。かと言ってそれが書きたいってことじゃないんだけど、俺も全然意図しないところでそういう駄目出しがきてしまったことがありますから、それだったら最初っから黒ベタが似合うようなね、あからさまに言っちゃいけない言葉を入れてってしまったらどうかと。それもcali≠gariっぽいじゃない、みたいな。〈そういうの得意でしょ? 青さん〉って(笑)」

――伏せ字と言いますか、音声自体も肝心なところで〈ピー〉って入ってますからね。

「そうですね。また曲がね、〈ピー〉が活きる曲じゃないですか。ミドルテンポの良い感じの曲とかで歌詞が引っかかっちゃうと〈ピー〉は似合わないから歌詞を変えるしかないけど、こういう曲は〈ピー〉って入ったら格好良いぞ、みたいな。勢いだけでガッてやってしまうような曲がいちばん最後に出来て良かったなと思いますけどね。曲はこんなんだけども(笑)」

――(笑)ただ、激しく突っ走っているなかにも最後の間奏のあたりでちょっと浮遊感のあるギターが入っていたりとか、速さのなかにフックもしっかりある。

「そうですね。だから、この1曲目、2曲目のギター・プレイはすごく青さんらしいっていうかね、俺がイメージする青さんのギターがこの2曲には詰め込まれてる感じがあって。それって俺がすごく好きな部分なんだけど、最近やってないな、っていうところが一気に入ってるから」

――それは例えば、不協和音とか?

「まあ、単純に不協和音って言っても全部同じかって言ったらそうじゃないじゃないですか。青さんは、さらに独特な感じがありますよね。〈そこいきますか!〉みたいな。俺はけっこうそういうのが欲しかったんですよね。〈これ、密室ノイローゼって感じじゃね?〉みたいな(笑)。なんか、再結成後のフル・アルバム(2009年作『10』)とミニ・アルバム(2010年作『≠』)っていうのは、ギターがちゃんとしすぎてたんですよね。ちゃんとするのはあたりまえですけど、いわゆる普通のプレイというかね、なんか上手に弾いてるような。それは青さんがっていうことではないけれども……難しいな、これ。文字になると青さんがそれを見てね、俺にいろいろ言ってくるからね(笑)」

――私も石井さんのインタヴューに対する感想をお話しいただいたことがあります(笑)。

「まあ要はね、整った、綺麗なプレイ……プレイっていうか楽曲もそういうごくあたりまえの方向に進んでたような気がしたんですよね。で、そこを壊していこうかっていう考え方をあまりしてなかった。だけどね、とある曲を作ってそれを聴いている時……TDの時ですよ? 研次郎くんが〈これ、すごいギターがちゃんとしてるね〉って。〈なんか、昔みたいな無茶苦茶なものを久しぶりに聴きたいよね〉ってことをふと言ったのね、俺に。ああ、そうだなと思って。すげえこれ、カッティングとかもちゃんとしてて……まあ、それはあたりまえだし(笑)それでも独特なのは独特なんだけど、そうじゃなくて青さんにしかない〈あの感じ〉――バンドの4人のなかで統一してる〈あの感じ〉っていうのがあるんですけど、それが欲しいね、ってことになって。ああ、そう言ってた曲って“娑婆乱打”かな。“娑婆乱打”とかさ、すごくまともなギターじゃないですか。でもね、〈あの感じ〉を聴いてないのはここ何年って話じゃないんです。再結成後からそうなったっていうわけじゃないですからね。アルバムで言ったら『第七実験室』(2002年)とかそれぐらいからそっち方面には行っていないから。ギターだけではなくね、全体的にそうですけど」

――〈あの感じ〉というのは、良い意味での破綻のようなものですか。

「そうですね。あとはね、なんだかんだ言ってけっこう俺が、青さんのプレイの幅を狭めてたところがあって。デモの段階でギターが入ってるじゃないですか。それを〈コピーして、ってわけじゃないよ〉って渡すけど、録ってる時に俺、〈デモの時はこんなふうに弾いてんだけどさ〉みたいなこと言っちゃうんですよね。自分のなかでそういう音が鳴っちゃってるから。これがよくねえんだなと思って。よくねえっていうか、もっと投げっ放しにしたほうが絶対おもしろいものになるっていうのはわかってるんだけども、どうしても〈言っちゃう〉っていうのがいままであって。だから今回は一切何も言わずに。逆に青さんは(桜井の口調で)〈これはデモの通りに弾けばいいんですかぁっ!?〉みたいなこと言ってくるんで、一切弾かなくていい、みたいな(笑)。好きなように格好良くしてくれたらそれでいい、って。それしか言ってないですからね、全部」

――それはそれでプレッシャーかもしれませんが。

「ははは(笑)」

――ただ、それで1曲目、2曲目のあのエキセントリックな勢いが生まれたということですね。

「うん。ギターがああいう感じじゃなかったら……まあベースも大概すごいのきてますけど……あっ、そうか。俺の作ったデモっていうのは、マコっつぁん(ドラムスの武井誠)が歌うヴァージョンっていうやつでどっかで聴けると思うんで。それでは俺のデモのトラックが鳴ってると思うんだけど、それと比べたら俺が作ったデモのほうは全然普通の曲だから、〈あ、こんな普通だったの?〉って、いわゆる破綻ぶりがわかるんじゃないですかね」



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掲載: 2012年01月11日 18:01

更新: 2012年01月11日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓

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