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ティントナーの弟子、フリーデルがロンドン響とブルックナー交響曲第5番を録音!

ランス・フリーデル

師ティントナーと同じロンドン響とブルックナーの第5をセッション録音!

ブルックナーの交響曲の名解釈と言えば、古くはシューリヒト、クナッパーツブッシュ、そしてマタチッチ、そして朝比奈、ヴァント……。強烈な個性の持主の芸術家が自身の見識と洞察力、そして統率力を披歴する楽曲として、演奏を展開し、聴衆を魅了して参りました。

そういう、神秘の森に殴り込みを掛けたのが、新進気鋭のアメリカ人指揮者、ランス・フリーデルと言えましょう。フリーデルは、チェコで高い評価を受けて国際的に活躍する1950年代生れの名指揮者。

作曲家の声に忠実に耳を傾けて、自己の解釈や表現を声高に提示するのではなく、静かに細密に描写していく演奏で、その姿は作曲者の使徒というよりも作曲者のしもべとでも呼びたい謙虚で真摯なものと言えましょう。言うなればハイティンク、アバドの姿勢と共通するものであり、その徹底ぶりは、これら二人を凌ぐとも申せましょう。

ロンドン交響楽団のブルックナーというのも極めて珍しく、第5番は恐らく初のディスク。しかもスタジオ・セッションは、2014年の1月に2日がかりでオール・ハロウズ教会で入念に行われました。SACDハイブリッドの高音質故に、どんな箇所も濁りや曖昧な部分が皆無。一般より早めのテンポを採用し、名技集団ロンドン響の抜群の運動神経も楽しめます。正に自らをブルックナーの深山幽谷に閉じ込めたかのようなストイックな姿勢です。

ノヴァーク1951年版を使用しております。

やはりブルックナーの名解釈者として高い評価を得たゲオルグ・ティントナーがフリーデルを高く評価したというのも納得の敬虔な名演です。
(東武ランドシステム)

ブルックナー:交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)
(演奏時間 [18:35][17:54][13:31][23:18])

ランス・フリーデル(指揮)ロンドン交響楽団

録音:2014年1月24-25日オール・ハロウズ教会,ゴスペル・ウォーク,ロンドン、73:19
DSD録音/SACD 5.0マルチチャンネル・ステレオCDのハイブリッド

【関連CD】レコード芸術推薦盤~ティントナー&LSOのブルックナー第5

「演奏の出来は素晴らしいの一語に尽きる。指揮者が解釈に揺るぎない自信を持って振り進んでいる演奏ならではの太い芯が通っており、オーケストラの反応にも全くブレが見られない。(略)当盤の場合は、もたれと紙一重のそうした停滞感は皆無で雄渾な進軍あるのみ。第4楽章のコラール[6分56秒~]の凛とした吹奏や、コーダの盛り上がりも(モノーラルながら)圧倒的だ」
金子建志氏批評より(「レコード芸術」2015年3月号推薦盤)

「演奏内容は第一級。これほど作為的でなく、自然で素朴で、作品そのものが鳴り響く感じはほかにない。テンポ設定も非常に良く、どこをとっても速すぎず遅すぎず、まさに理想的。また、ターニャ未亡人の解説(日本語)によると、このときロンドン響が初めて原典版(最初の出版は戦前)を演奏したというのも驚きだった。」
平林直哉氏批評より(「MJ無線と実験」2015年3月号Classic Review)

最晩年にNAXOSレーベルへ記念碑的なブルックナーの交響曲全集を録音し、世界のブルックナー・ファンを魅了したウィーン出身の巨匠ゲオルグ・ティントナー(1917~1999)。彼が52歳の1969年、生涯で初めてブルックナーの交響曲第5番を演奏したときの貴重な録音が日本盤タワーレコード完全限定盤として登場!

オーケストラは名門ロンドン交響楽団、BBCでの放送用スタジオ録音。ティントナーがロンドン交響楽団を指揮したのも初めてなら、ロンドン交響楽団が原典版(ハース版)でブルックナーの第5を演奏するのもこれが初めてでした。BBCが保管するオリジナル・マスターテープ(モノラル)から、ポール・ベイリーがデジタル・マスタリングしテスタメント・レーベルより発売されます。
(タワーレコード)

ティントナーはウィーン少年合唱団のメンバーとしてブルックナーの弟子、シャルクの棒でブルックナーのミサ曲を歌い、ブルックナーの音楽の洗礼を受けました。13歳で入学したウィーン国立音楽アカデミーでは作曲の神童としてマルクスに学び、同時に指揮をワインガルトナーに師事。ウィーン大学ではブルックナー研究で名高いハースとオーレルに学びました。19歳でウィーン・フォルクスオパーのアシスタント・コンダクターとなりますが、1938年にナチスがオーストリアを併合すると突然解雇されてしまいます。国外脱出を余儀なくされたティントナーは弟子の計らいでニュージランドに避難。しかし、この地でも敵国人扱いを受け、アマチュア音楽家を指導しながら養鶏場を営むような生活を強いられました。

戦後はオーストラリアの歌劇場と放送オーケストラで活動した後、1966年に南アフリカ、ケープタウン市立歌劇場の指揮者となり、翌年よりイギリスに渡りサドラーズ・ウェルズ歌劇場の補助指揮者に就任。ロンドンと周辺地域でのオペレッタの上演がきっかけとなり、メニューインとピアニストのデニス・マシューズの援助を受け、2つのBBCのスタジオ録音を確約されました。ひとつはロンドン・モーツァルト・プレイヤーズとの演奏で、もうひとつがここに発売されるロンドン交響楽団との録音(1969年9月21日)です。このロンドン交響楽団との共演は、当時の首席オーボエ奏者であったアントニー・キャムデンが1964年にニュージーランドを訪れティントナーの演奏を聴き感動したという経験を持っていたため実現したものでもありました。遂に、ティントナーはブルックナーの交響曲第5番を指揮する機会を得ました。同時に録音されたのは、1841年初版のシューマンの交響曲第4番とワーグナーの『ファウスト』序曲でした。ティントナーは「BBCは4回もリハーサルをさせてくれ、その上100ポンドというとんでもない報酬を払ってくれた!」と喜びました。

ティントナーは最初のリハーサルに自転車に乗って現れ、服装はバギーパンツという非常にカジュアルなものでした。団員のひとりが、何人かのメンバーがその姿を嘲笑していると教えてくれたそうです。しかし、録音の最終日には、楽団員たちがティントナーに大喝采を贈るまでに至りました。
(ティントナー未亡人、ターニャ執筆のライナーノーツより抄訳)

カテゴリ : ニューリリース | タグ : 高音質(クラシック) SACDハイブリッド(クラシック)

掲載: 2016年05月06日 18:30