インタビュー

INTERVIEW with 1031(3)――オープンなマインド

 

オープンなマインド

 

――では、1031さんを叩き起こしたものは何ですか?

「……そうですねー、いろいろありましたけど、もうちょい、いい思いしたいっていうか……うーんと……(考え込む)……幸せとか、居心地の良さとかって…………それをずっと守っているだけでは保たれないと思うんですよ。獲得し続けないと、保たれさえもしないというか…………ずっとこのままならいいのにっていうことがいっぱいあるんですけど、〈何もしない〉っていう選択だと、このままでいることすらもキープされないと思って…………何ていうんですかねえ……自分の居心地のいい場所を保つために……出かけるみたいな感じですかね。なんか、お城を出てフィールドに出たみたいな。ドラクエで言ったら、戦いに行かないと(敵が)来ちゃうから、みたいな(笑)。〈そっか、やんなきゃ駄目か〉みたいな感じですよ、〈よしっ!〉って無理に自分を奮い立たせるみたいな」

――それは音楽を続けるために?

「音楽を終わりにするってのはないですね……それは無理だと思うんですよ。もともと音楽をやることが手放せなくて、いまに至るようなものなので。ただ、その場所をキープするためには、やっぱ攻めるっていうか……そこにずっと体育座りしてると蹴り出されるということがわかったみたいな」

――どうして蹴り出されちゃうの?

「それは……世の中っていうか…………うーん…………(考え込む)…………何かふいに、そこにビル建てるからどいてって言われたり、交通事故ぐらいの確率で岩が降ってきたりとかすることって結構ある気がするんですよ。〈何にもしてないのに、何でこんなことになったの?〉ってことって結構あると思うんですよ。………そうだ、例えばなんでもない都会の外れで、すごいキレイな花を咲かせたとして。その花は、あきらかにキレイなんですよ。相対的な評価ではなく、もう絶対的に。ですけど、そのキレイさを保つためには、肥料とか、いい土を買ったりとか、水をあげたりとか、周りに柵を立てたりとか………しないと枯れちゃうじゃないですか。あと、あきらかにキレイなんですけど、何もしなかったら誰も見に来ないじゃないですか。それで今回からは、ちょっと繁華街に行って、花好きの人がいたらビラを渡して〈キレイな花が咲いてるんで来てください〉って言ったりとか、大通りに看板を置いて誘うとか、そういうことをしはじめたって感じですかね。それをしないとその維持もできないってことですね」

――それを音楽に言い換えると、自分たちの音楽をより深く伝えるために工夫したっていうこと?

「うーん、そうですね……もうちょっと、〈友達が欲しい〉みたいな感覚なんですよね。友達になってもらう道具が作品なんですよ。それ聴いて〈いいね〉って思ってくれる人なら、友達になれるって思って作ってるんですね………………だからそうですね、ホント友達が欲しいですね、ハイ(笑)」

――じゃ、なりますか。友達に(笑)。

「ありがとうございます(笑)。そういうパーソナルなものですね、僕の音楽って。渋谷系とかはけっこう職人っぽく、クールに作ってると思うんですよ。パーソナルなことはちょっと格好悪いとかいうような立場だと思うんです。そういうふうに自分と真逆だから憧れるのかもしれないですけど、僕は出しちゃうんですよね。歌詞を普遍化するとか、そういう匂い消しみたいのはするんですけど、感覚としては身近なんですよね、自分の音楽と自分って。だから、自分の音楽を好きになってほしいっていう願いが強いんです。それはイコール僕を認めてくれるかどうか、僕みたいな人間を受け入れてくれるか、っていうことと繋がってて……イコール、〈友達が欲しい〉ってのと同じことなんですけど。友達ができるにはどうすればいいかってところで……今回は、自己紹介代わりっていう性格を強めたって感じですね。前は、〈来てくれればわかります〉っていうような、頑固なラーメン屋みたいなところがあったと思うんですよ。けっこうそういう性格なんですけど。でも今回は〈こういう者です〉っていう、オープンなマインドって違いがありますね」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年04月19日 20:30

更新: 2010年04月19日 21:36

インタヴュー・文/土田真弓