インタビュー

INTERVIEW with 1031(5)――無防備すぎるほどのエモーション

 

無防備すぎるほどのエモーション

 

――そして、そういう話の流れだと今回の作品は歌詞に……。

「そうなんですよ、エモーションが漏れちゃってるんですよ」

――もう、だだ漏れです(笑)。

「自分のなかでは恥ずかしいぐらい漏れちゃってるんですよ。〈これ、バレちゃうんじゃないの?〉とか、自分のホントの気持ちみたいなものが。まあ嘘ってわけじゃないんですけど、いままでも。でもちょっと無防備すぎるぐらい……裸みたいな感じなんですよ。自分では限界な恥ずかしさなんですけど。とは言え、だだ漏れですかね。見え隠れしてるだけってつもりなんですけど」

――受け取るものは大きかったけどな。

「そうか(笑)。自分にできるストレートの限界はこれぐらいだなって感じなんですよ。現時点での基準っていうか。でも意外と見え隠れぐらいかなあって思ってたんですけど……そうじゃなかったみたいですね」

――あとね、歌ってるのに、すごく大事なところを歌詞から省いていたりとか。これ、誤植とかじゃないと思うんですけど。

「そう言っていただけると。ホントに〈誤植ですか?〉って言われたりするんですよ」

――えっ、今回の作品で?

「いや、前回ので」

――前回は、歌詞が丸ごとないとかもありましたしね(笑)。

「そういうのがあると打ちのめされますね。〈間違いですか?〉とか、〈なんで書かないんですか?〉とか。〈私は歌詞を大切にするので、載ってないのは嫌です〉とか言われて。そういう〈伝わらない感〉みたいなのに参って、今回は妥協じゃないですけど、だいぶ歩み寄って。それでも落とすところは落としたし」

 

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――私は〈肝心なことを素直に出せないタイプのソングライターなんだな〉って思いましたけどね。逆に、〈すごく大事にしてるところがそこなんだろうな〉とも思ったし。だから、今回の作品の資料に〈このアルバムには特によく涙が零れそうになるところが2か所あって、そのうちの1か所は最後の曲にあります〉って書いてありますけど、もう1か所は、今回のアルバムのなかで唯一、1センテンス丸ごと歌詞が省略されているところかな、って……。

「それはまあ(笑)。もう1か所を書かないところが、ホント、良くも悪くも1031っぽい、みたいな。好き嫌いの分かれるとこなんですよね

――……赤くなってますけど。当たった?

「いや、答えは言いません(笑)。〈どこかなあ〉って思わせたいですからね」

――了解です。

「あと、4曲目“slipping away pt.3”がもともとは昔の曲で……大学1年とか2年の時にやってた曲をすごい大手術して、ほぼ共作みたいなぐらい……」

――その頃のメンバーと?

「いやいや、(その頃の)僕とですけど。だから原型とだいぶ違うんですけど、一応昔の曲なんですよ。サビがほとんど違ったりとかしちゃうんですけどね。でも1番のAメロとかは、昔の歌詞を活かしているんです。いまだったら絶対書けないですよ。超恥ずかしいんですよ、これ(笑)。18とか19の頃なんで……こんな感じでしたね、終始。ただ、最後のAメロはだけは今回新しく書いていて。〈お休みの火曜日〉。この一節が超好きで。当時とのギャップっていうか……われながらこれほど違うか、って思う。別の書き手みたいだなって思うんですけど」

――この曲は、最初と最後に入ってるSEで別のところに連れて行かれる感じがありますね。

「あれは大学のホールの地下で吹奏楽部の……」

――やっぱり(笑)! すごいノスタルジックな気持ちを掻き立てられました。

「ちゃんと録りにいったんですよ」

――そうなんですね。先に言われちゃいましたけど、学生時代の曲なんだろうなっていう。

「そういう曲なんで、ドラマーと2人で夏休みかなんかに大学に忍び込んで、レコーダーで音出ししてるのを録ったんですけど。当時、この曲を書いた時の匂いみたいのを入れたくて。そういう事情なので、自分では否が応でもしんみりするんですけど。今回書き下ろしたその一節が、ああいい歌詞だなあって思うんですよ。で、当時のは恥ずかしくてって感じなんですね。嫌だとかはないんですけど、いまはもうひっくり返っても書けないなあって思うんですよ。〈次のヒーローは誰だい〉って言ってる感じ、熱いボウヤみたいな(笑)。そういうのがおもしろいなあって思いますね」

――それをあえて使ったっていうのは、何か変化があったんじゃないですか。

「そうですね、敬意ですね。なんだかんだ言っても、まあ大好きですからね。子供のようなものだから、昔のやつも。当時は自分たちの表現力とか演奏力とかが足りなくて、曲の良さをちゃんと表現できていなかった。だから、曲に罪はないって思ってて。全部世に出してあげたいってぐらい、当然、自分のものだからそれぐらいの思い入れはあるので……なるべく、いまの僕が持てる能力をフルに使って、外に連れ出せるように、って。供養じゃないですけど、ちょっとそういう気持ちがあって、残すところは残そうって思ったんですね」

――あと、このタイトルって……。

「タイトルはもともと“slipping away”って曲だったんですけど。“Slipping Away”ってのはキースの曲で、何かが似てたのか、当時、なんで付けたのか忘れたんですけど。当時からオマージュみたいのが好きで。“シャローナ・シャローナ”も2年目とか3年目ぐらいだったし。今回は、仮に〈pt.1〉がキースの曲だったとしたら、前のは〈pt.2〉で、みたいな。そういう思いを込めて」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年04月19日 20:30

更新: 2010年04月19日 21:36

インタヴュー・文/土田真弓