LFJ2019に登場する主な作曲家
LFJ2019に登場する主な作曲家
テーマ「ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)」
いつの時代にも、作曲家たちは新たなインスピレーションを求めて異国の地を目指しました。彼らは、異文化から吸収したさまざまな刺激を、自分たちの創作に取り入れたのです。音楽祭の中では、作曲家たちの旅の軌跡を多彩なプログラムと共にご紹介いたします。
一例を挙げれば、18世紀には、モーツァルトがヨーロッパ中を旅しながら名作の数々を遺し、晩年のハイドンもロンドンで暮らしながら一連の交響曲を発表しています。そして、ロマン派を代表する「旅人」と言えばリストでしょう。真の「コスモポリタン=世界市民」であったリストは、イタリア滞在中に得たインスピレーションを《巡礼の年:第2年「イタリア」》に昇華させました。また、ラヴェル(《スペイン狂詩曲》)やシャブリエ(狂詩曲《スペイン》)も、スペインにちなんだ美しい音楽を残しています。このように、今回のLFJでは、さまざまな時代の作曲家たちが旅先で得た刺激の下に書き上げた名作の数々が主役となって、音楽祭を華やかに彩るのです。
アーティスティック・ディレクター
ルネ・マルタン
《ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019》
日仏共通オフィシャルブック
旅する作曲家たち
コリンヌ・シュネデール著、 西久美子訳
ここではないどこかへ、作曲家は音楽を手に携えて旅をする──
修行のため400kmを徒歩で旅した大バッハ、ヨーロッパ中を狂乱させたパガニーニの楽旅、バルトークの民族音楽研究旅行、豪華客船や鉄道に熱狂したタンスマンやオネゲル、山をこよなく愛したマーラー、転地療法に望みをかけたショパン……
旅はいかに作曲家たちの想像力を刺激したのか──
「行け! 外へ出て、遠方をめざせ!世界こそ、芸術家が挑むべき舞台!」──C.M.v.ウェーバー
(1)18世紀~ロマン派の作曲家たち
モーツァルト(1756~1791)
ヨーロッパ中を旅行、様々な音楽スタイルを柔軟に吸収したコスモポリタンな作曲家。
[演奏曲]ピアノ協奏曲第25番、クラリネット協奏曲、オペラ《後宮からの誘拐》 ほか
リスト(1811~1886)
ロマン派時代を代表する「旅人」。ピアニストとして欧州各地を転々とした。
[演奏曲]ピアノ協奏曲第1番、第2番、巡礼の年、旅人のアルバム ほか
ベルリオーズ(1803~1869)
大の旅行好きとして知られ、特にイタリアは彼を魅了した。
[演奏曲]交響曲《イタリアのハロルド》、序曲《ローマの謝肉祭》、ほか
メンデルスゾーン(1809~1847)
「音の風景画家」の面目躍如。各地の空気を自然に伝える曲を多数作曲。
[演奏曲]交響曲第4番《イタリア》、幻想曲《スコットランド・ソナタ》、ほか
(2)19世紀、ロシアの作曲家たち
グリンカ(1804~1857)
数か国語をマスターするほど大変な旅行家で、旅先の民族音楽にも影響を受ける。
[演奏曲]スペイン序曲第1番「ホタ・アラゴネーサによる奇想曲」、ほか
チャイコフスキー(1840~1893)
モスクワ音楽院を辞職後、約10年間イタリアやフランスを旅する生活を送り作風を洗練。
[演奏曲]イタリア奇想曲、弦楽六重奏曲《フィレンツェの思い出》、ほか
リムスキー=コルサコフ(1844~1908)
海軍に在籍、自身の船乗りで「シェエラザード」にみられるように海の描写を得意とした。
[演奏曲]交響組曲《シェエラザード》、スペイン奇想曲、ほか
ラフマニノフ(1873~1943)
ロシア革命によ演奏旅行に出て祖国に戻らず、渡米。新しい作曲の境地を開いた。
[演奏曲]ピアノ協奏曲第3番、パガニーニの主題による狂詩曲、楽興の時、ほか
(3)19世紀、フランスの作曲家たち
サン=サーンス(1835~1921)
無類の旅好きとして知られ、特に東洋に魅せられた。
[演奏曲]アルジェリア組曲、ピアノ協奏曲第5番《エジプト風》、アラビア奇想曲、ほか
ラヴェル(1875~1937)
演奏旅行を盛んに行い、スペインをテーマとした作品も発表。アメリカでジャズの影響も。
[演奏曲]スペイン狂詩曲、ピアノ協奏曲、5つのギリシャ民謡、海原の小舟、ほか
ミヨー(1892~1974)
外交官秘書時代ブラジルで生活、ニューヨークやロンドンも旅して影響を受ける。
[演奏曲]ニューヨークのフランス人、スカラムーシュ、屋根の上の牡牛、ほか
(4)19世紀~20世紀、スペインの作曲家たち
アルベニス(1860~1909)
世界各地を演奏して周り、30代で祖国スペインを離れフランスとイギリスに移住。
[演奏曲]旅の思い出から「海にて」、組曲「イベリア」第3巻から、ほか
ファリャ(1876~1946)
7年間パリに滞在、ドビュッシーらと親交を結んだことは作曲技法にも大きく影響した。
[演奏曲]スペイン舞曲、バレエ《恋は魔術師》から火祭りの踊り、ほか